フランス2016 Rendez-vous à Bordeaux: 6日目 ワイン博物館-BOD-CDG-HND

ちょっとだけ早起きしたら、秋のフランスの朝7時はまだ真っ暗なのでおどろいた。
お世話になった家を出る前に、よーしよしよしよし、とマルセルを撫でたおす。マルセルってフランスではちょっと古くさい名前というイメージなので、あえてこの名前をつけたんだ、とPが言っていたのだけど、日本でいうと八兵衛とか源五郎とかそういうかんじなのかしら?

スーツケースを車に積み込み、前日と同じトラムの駅で身ひとつで降ろしてもらう。午後に同じ場所で待ち合わせの予定。

前日はけっこう余裕があって座れたトラムも、8時台だと通勤・通学ラッシュで激混み。東京のように殺伐として圧迫感がある雰囲気ではないけど、乗客が皆ぼーっと物憂げな表情なのは日本と変わらないので親近感。
大きな教会の前を通ったらクリスマスツリーの設置中だったので、わー、見たい見たい!とトラムを降りてみる。なかなか大がかりですね。



また電車に乗ってオペラハウスのほうまで行ってお散歩。Paulのスタンドでパンとコーヒーを買って、地元っ子をまねて歩きながら食べる。ボルドーではパン・オ・ショコラのことをChocolatine (ショコラティン)と呼ぶので、オーダーするときに地元のひとっぽく言ってみて、絶対ウケるから、とPに念おしされていたのに、うっかりPain au chocolat, s'il vous plaît、と普通に頼んでしまった。不覚。
しかし、カフェオレを頼んだのに、店員さんが間違って別のドリンクを用意しようとして「あ、ごめん!まちがえた!俺ってbadだな。ブレイキング・バッド!君、ブレイキング・バッド知ってる?」と陽気に言ってくるので「知ってる!大好きー!」「最高だよな!!」と別方向で盛り上がったのでOK。

まだまだ時間があるので、今年の夏ごろにオープンしたワイン博物館(La Cité du Vin)に行ってみる。すごく不思議な形の建物は、デキャンタをイメージしているとか。






地上階でチケットを買って、3階の常設展示の入り口で「日本人です」と言うと、ヘッドフォンとスマートフォンみたいな音声ガイド端末を日本語設定に変更して渡してくれた。端末を展示品のセンサーに近づけると日本語で説明が始まる仕様。ちょっとキザな語り口のナレーションなんだけど、日本語に翻訳された文章がスムーズだな、と感心しました。

大画面で常に流れている、世界各地のワイン産地をダイナミックに撮影した映像がとても美しくて心躍る。アルザスはもちろん、山梨の葡萄畑もすごく素敵に撮られていました。

展示内容はとにかく多岐にわたり、葡萄の木のしくみ、有機栽培について、ワインの産地のあれこれ、古代史とワイン、宗教とワイン、とか情報量がとにかく多い!
ワインを表現する香りをいろいろ体感できるコーナーが特に楽しかった。さまざまな食べ物やスパイスや花に加え、古本とか皮の手袋とかは嗅ぐと「んーー!」ってなる。
ワインの色あい当てクイズ、初心者コースからエキスパートコースまであるワイン知識クイズ、ワインの楽しみ方を知らんひとが話してる映像を楽しく見せる仕組みとか、工夫がいっぱい。ボルドーの歴史のお勉強もできます。

ワインにまつわる逸話があれこれ展開されるコーナーで、わたしがもっとも注目したのはこれ↓「飲酒と失敗」!!あるあるあるーーーーーー!



これはもう、ただただ苦笑いで聴いたよね。あるあるあるーーーー!

最後は9階まで行って、見晴らしのよい部屋で好きなワインをひとつ選んでグラスでいただくことができます。わたしは”Carpe Diem”という名前に惹かれたのでそちらチョイス。そう、まさに、今この1日を楽しむこと!!ほどよい重さの赤ワインを飲みながらボルドーの街をながめる。

以上で見学終了。ボルドーでちょっと時間がある場合は行ってみるのも楽しいかと思います。
カンコンス広場の蚤の市みたいなところを散策。



お昼ごはんはインターコンチのレストランへ。ビーフウェリントンと美味しい赤ワインをいただく。ワイン2杯で旅の終わりの寂しさを少し鈍らせようという趣向。



トラムで大学方面に戻り、Pと合流。講義やミーティングの合間をぬってどうにか出てきてくれたため、彼にあるまじきランチ抜きの状態だった。ありがとう!

空港になんて永遠につかなくていいのに、と思いながら車内では「やだ、ちょっと、今なんか轢死体があったよね」「たぶんヤマアラシだと思う。ヤマアラシってよく実家の庭でうちのネコと喧嘩してた」等きわめて浪漫に欠ける会話が続く。

あっというまに空港に到着してしまい、バブル時代の最終の新幹線のホームのカップル(古い)さながら出発ロビーでぐずぐずと別れを惜しみ、仕事に戻らなければならないPを先に送り出す。ひたすら心を無にして搭乗手続きを行い、無の境地でパリ行きのフライトを待つ。

飛行機が離陸するころに雨がふりはじめ、この数日間のとてつもない幸福感と様々な思案が渦巻いて、窓をななめに叩く雨とこぼれる涙がちょうどリンクしていることにうっすら酔いしれるドラマクイーン。

パリから羽田のフライトでもひたすら心を無に。しかしながら『君の名は』を観て、ストーリーはよくできているけれど、やっぱりこういう男性目線の女子高生を描いたアニメーションってどうしても苦手だなあと思ういっぽう、ラストで「なるほどね」と思った瞬間に、つい油断してまたいろんなことに思いを馳せてしまい、内容とは関係ないところでひとりで勝手に大泣き。
久々に『ノッティングヒルの恋人』を見たら、ダウントンアビーの旦那様がヒュー・グラントの友だち役で出ていて驚いた!