カポーティ

marik2006-10-13

これはもう、カポーティを崇拝する者にとってはアイドル映画。カポーティが動いてる!話してる!お酒飲んでる!わお!とドキドキしながら拝見しました。カポーティというかフィリップ・シーモア・ホフマンなのだけれど。子どものような大人、あるいは大人のような子どものような不思議な佇まいを完全に再現していて(動いているご本人を見たことないのでアレだけど)、本当に見事だった。ことあるごとに、うさぎのように鼻をひくひくさせる姿がなんともいとおしい。

先日久々に『冷血』を読み直してみて、カポーティの想像力、情報の咀嚼力、場面の切り取り方の独自性にあらためて感服することしきりだったのだけど、映画でこうして作品の種が育っていく過程や葛藤を見ることができてよかった。事件があの街に落とした影や犯人の生い立ちなど、カポーティが何故あの作品を書くことに強く惹かれたかというあたりは、やはり時間不足の感が否めない気もしたものの。ラストは、分かっていても、ずしりと重く響きます。当事者ではない人間の残酷さもまた「冷血」である、という視点はしっかり伝わってきました。