圧倒的運動不足で挑戦する熊野古道 - 1日目 (羽田 - 南紀白浜 - 滝尻 - 高原)

朝5時起きで空港に向かう。すでに気もそぞろなので電車の時間を早めに勘違いしていて慌てて家を出て、無駄に長い待ち時間を費やし羽田着。

搭乗ゲートの近くのトイレでデカいバックパックを背負って手を洗っていたら「どちらの山へ?」とご婦人に聞かれ「熊野古道です!」「あら、いいわね。私も歩いたことありますよー。楽しんできてね」と会話。登山する人っぽく擬態できていることに安堵。
ゲートに表示された出発時間が5分遅くなっていて、ふーんと思いながら待機し、いざ乗ろうとしたらゲートで弾かれた。係員の人と一緒に「あれ?」ってなって固まっていたら「こちらは札幌行きの便なのですが」と言われてビビる。今まで、飛行機の行き先間違えて乗っちゃうケースってありえないと思ってたのに、行き先すら見ない自分に出会うとは思ってもいなかった......「南紀白浜は隣のゲートです」と言われて移動するも、ゲートの距離がめっちゃ離れてて、出発時間10分前で、むちゃくちゃ焦りながら7キロのリュック背負って小走り。膝の痛みをかばうどころではない。
ようやくゲートに辿り着くとまだ他のお客さんが搭乗中でセーフ!!うっかりがすぎる。飛行機に乗り込むだけでこんなに疲れていて大丈夫なのだろうか。
南紀白浜空港に到着後、中辺路の出発点滝尻を目指してバスに乗車。不安でいっぱいの中、ふと車窓から空を見上げたらハロっていうのかな?太陽の周りに円環ができてるのが珍しくて、ふと、「お母さんが守ってくれてる」と確信して泣けてきた。

1時間半弱のバスの旅で滝尻王子に着いたのが11時ごろ。バスを降りたのは私を含めて3組で、皆英語スピーカーだった。これが熊野古道館ね!ついにはじまる!

 
万が一に備え、友人にその日の目的地と出発/到着報告をすることで安否確認を徹底。今日の予定は高原までの4km。数字だけだと短くて大丈夫感が強い。なんとかなる!

滝尻茶屋の横で一つ目のスタンプを押し、熊野古道中辺路の起点を11:30くらいに出発。

いきなりの急な道。がんばれ私の膝と腰。

車の音が聞こえてくるので、大丈夫、一人じゃないと言い聞かせつつぽつぽつと登る。速攻汗だらだら、飛ぶ虫がむっちゃ顔にからんでくる。道が険しすぎてどこにストレッチポールや足をついたらよいかわからず途方に暮れる。木の根に足をとられて何度もグネりそうになる。道なき道をどこに進んだら良いのかわからず呆然とする。

孤独できついきつい急な山道を歩くこと50分ほどで次のスタンプ地点、不寝童子に到着。いやあ、よく歩いた!もう半分くらい来たんじゃない?と期待して標識を見るとここまでの進捗0.5km。500m進むだけなのに、こんなに辛いことがあるのか!山道の洗礼。

熊野古道では、滝尻王子の起点から0.5kmおきに数字が一個ずつ増えていく道標があります。これだけ歩いて疲弊してやっと「1」......涼しい家でごろごろしながら韓国ドラマ見ていたいよ......

いつの間にか下界の車の音も聞こえなくなりスマホも完全に圏外で心細さマックス。iPhoneBTSを流してしばらく機嫌よく歩いていると、話し声が聞こえてきたので音源オフ。70代くらいの女性たちとすれ違ってこんにちわーとご挨拶した後、彼女たちのお元気な姿に母をふと思い出して悲しみスイッチが入り、山道の歩みがしんどいのと母恋しさでわあわあ泣きながらしばし歩く。
しばらくして涙が落ち着き、ひとりで歌いながら歩き(情緒の上下の激しさよ)、♪ぴたむぬんむるぅ、とBTSの血汗涙を熱唱してると突然鈴の音が聞こえ、わりと近くから人が歩いてきて照れ笑いでご挨拶。高原方面に歩く人しかいない一方通行かと思ってたけど、これで二組も反対側からの登山者とすれ違った。
歩き出して2時間ほど経ち、コンビニで買ってたおにぎりを食べたいけど休憩できそうな場所が無いのでバックパックだけ地面に下ろして(解放感!)無表情で立ったまま完食。ふたたび「しんどい」と何度もつぶやきながら歩く。足元に巨大ムカデを発見してビビる。
無になってただただ山道を歩き続けると数時間ぶりにコンクリートの道が見えたー!わーい!これでやっと2.5km......

車道に出たところでどっちに歩くんだろう?と地図を広げたら地元の人が通りかかり、「熊野古道はこっちですよー」と速攻教えてくれた。ありがたい!
車道も見えたしあとは楽な道だよねきっと、と思ったところで再び果てしない登り道に出くわし呆然。

「しんどいしんどい」とつぶやき「お母さーん」と泣きながら歩き続け、やがて、ようやく、民家っぽいのが見えてきた。道が舗装されてる!舗装された道ってなんて歩きやすいの!!

道なりに美しい山郷の風景が広がり、やっとおだやかな気持ちに。高原熊野神社に到着!疲れすぎてスタンプポイントだったのに押すの忘れてた。

神社から宿に向かう途中に展望台があり、バスを降りて以来初めて座って休憩。田植え直後の棚田の景色が美しかった。

15時ちょいすぎに本日の宿に到着。チェックインしてすぐさま温泉をひいてる大浴場に向かい至福のひととき。あああああ温泉最高!沁みる!山道を大泣きして歩いてた時間が幻のよう。私がんばった!えらい!洗濯機借りてお洗濯&部屋のバルコニーで軽めに一杯。

この宿、スペインで暮らしていた方が経営していて、カミーノっぽいバイブスが溢れる宿全体や部屋の雰囲気や外の眺めも最高なんだけど、オーガニックの料理もかなり良いとの評判を聞いてむちゃくちゃ楽しみにしていたのです。時間になって食堂に行くと期待以上の素敵ディナーだった!疲れすぎおよび老眼のせいで右側の料理は「タコスです」と説明されたにもかかわらずタコスの皮に気づかず白いお皿だと思い込んでいて、上の具の部分だけずっとパクパク食べて、最後に「あれ?皮あった!」って気づいて皮だけくるくる巻いて食べた。うっかりが多すぎる一日。

ワインとともにいただく美味なタパス。ああああしあわせ!!

すき焼きも美味しかった!食後お部屋でごろごろしてたら寒くなってきたのでまた温泉に入って至福。一番の懸案事項だった腰と膝はやや痛むけど、サポーターのおかげかそこまでダメージ来てない。念のためロキソニンのゲルをすごい勢いで脚や腰に塗り込んでおく。疲れすぎてなかなか寝付けず一日目終了。