三峡好人 @東京フィルメックス

三峡の水辺の絶景以外は、華やかなものや綺麗なものはまったく出てこないのに、「美しい映画を観たなあ」という気持ちに満たされた。ダム建設のために壊されていく風景の中で生きている人たちの日々の光景は、蒸し暑そうだしほこりっぽそうだし騒々しそうなのに、何故かときおり、英語タイトルの"Still Life"さながらの静物画のような静謐さと美しさを感じました。そして、実にこの世は無常だ、としみじみ。

ジャ・ジャンクー監督の作品を初めて見たのだけど、人間の弱さや強さやずるさや優しさをあるがままに映し出す、鋭くも愛情のある目線が印象的でした。先月あたり、ジャ・ジャンクーの新作にジェイ・チョウを起用したいと、出資者の北野武が希望している→ジェイのスケジュールが合わず交渉不成立、という情報が流れたけど、この組み合わせ、見てみたい。可能性に満ちたご両人のことなので、今後のキャリアの中で、一緒に映画を創る機会もまた巡ってくることでしょう。その日が楽しみ。

素朴な疑問なのだけど、あの主人公の男の人は俳優あるいは素人どちらなのだろう?松尾スズキを100倍しょんぼりさせたような雰囲気がすごく良かった。俳優だったら、あのなんとも味わいのある演技はすごいし、素人だとしたら、ただならぬ絶妙な存在感。上映後のQ&Aではなんとなく聞きづらかったので一人モヤモヤ。

わ、今検索してみたら、俳優さんでした。失礼しました。