文雀 Sparrow @東京フィルメックス

marik2008-11-23

なんてお茶目な映画!ジョニー・トーのいつもの物騒さや巧みな伏線が息をひそめ、リラックスしたあたたかい風が吹いているような作品だった。
なにかで見た予告編で"A love letter to the city"という惹句があった気がするのだけど、その言葉にふさわしく、香港の街そのものへの愛情がフィルムに焼きついているかんじ。ヤムヤムが飄々と自転車をこぎながら通り過ぎたり写真におさめたりする様々な景色や、トラムがぐぅおおおおんと走り抜ける音やトゥクトゥクトゥクトゥクと鳴る信号など香港の街をわくわくしながら歩いているときに聞くあの音や、そういったものへの愛おしさや郷愁を刺激されて、ちょっと涙がでた。
おなじみの緊張とユーモアのバランスや、人間のふとした瞬間の可愛らしさを描くさまも絶妙で、もう本当に愛おしくてしょうがない映画だったけれど、今度香港に行ったらマジでスリに注意しよう、黒光りした素敵な中年男性にぶつかられて謝られたりした際にはすぐに財布を確認しよう、と思いました。