The Friday Night Knitting Club (Friday Night Knitting Club Series) / Kate Jacobs

マンハッタンにある毛糸屋ウォーカーズ&ドーターズ。店主のジョージア・ウォーカーズと、彼女が女手ひとつで育ててきた12歳の娘のダコタ、ジョージアの編み物の才能を見出し、彼女を励まし支え続けてきた友人のアニタを中心に、毎週金曜の夜になると店の常連たちが集まり、編み物クラブが開かれる。父親の顔を知らないまま大きくなったダコタのもとにある日、父であるジェームスが現れ、さらにはすっかり疎遠になっていたジョージアのかつての親友も現れる。思春期の入り口に立つ娘の変化に戸惑い、過去の辛い思い出が立て続けに蘇る再会に苛立ちを覚えるジョージア。編み物クラブに集まるメンバーもまた、一人ひとりが孤独や焦りや不安を抱えている。彼女たちは互いに喜びや悲しみをわかちあい支えあいながら、それぞれが自分の幸せを見つけていくが・・・というお話。

これ、とてもいい小説だった。表紙などの推薦文に「マンハッタンを舞台にした『マグノリアの花たち』」とか、「現代版『キルトに綴る愛』」とか書かれているのだけど、まさにそういう感じの、いろんな年代の女性たちの群像劇。私はつくづく、こういう、たくさんの女性が出てきて仕事や恋や人生に悩んでなんやかんやおしゃべりするタイプの物語が大好きなんだな、とあらためて思った。マンハッタンでの物語であるがゆえに、話の流れに適度なスピード感があって小気味がよく、東洋系やインド系のアメリカ人がさらっと描かれているのも奥行きがあってよい。すごい掘り出しものを発見した気分で、まさしくこういう小説を翻訳したいのだ私は!と鼻息荒くしていたら、すでに日本語版が出ていた・・・そういうものよね・・・。

毛糸で何かを編み出す、という行為とからめた人生への示唆に満ちた言葉があちこちにちりばめられていてキャッチーだし、登場人物ひとりひとりのキャラクターがしっかりしていて、それぞれが程よくドラマチックで、これって絶対、映画化を狙って書いてるよね?とずっと思いながら読んでいて、主人公はジュリア・ロバーツ(文中で、編み物にハマっているセレブリティとして名前が出てくる)か、新境地開拓で意外とキャメロン・ディアスとかジェニファー・アニストンなんてどうかしら、ジェームス役は、予算があればウィル・スミス、バジェット的に難しければ、SATCのシーズン5あたりに出ていたニックスのドクター役だった人かな、などと勝手にキャスティングしていたら、ジュリア・ロバーツがプロデューサー&主演で映画化の話が進んでいるとのこと。よくできた話だし、毛糸をつかったあれこれも映像化したら素敵だろうし、なかなか面白い映画になるのではないかしらと思います。楽しみ。

あと、これを読んでいるともれなく、編み物をしたい!という衝動にかられます。小学生の頃に鈎針編みでマフラーを途中まで編みかけて挫折したのが唯一の編み物経験である私ですらそう思うのです。