香港の甘い豆腐 

ええ小説。タイトルがまず素晴らしい。豆腐花を最初に食べた時の、やや?という驚き、香港の街を初めて歩いた時のテンション上がる感じが、ギュッと濃縮された題だと思う。そして本文も、ページをめくる度に香港への抑えがたい郷愁と愛情があふれて困っちゃう感じだった。同時に十代の頃のいわゆるひとつのアイデンティティの模索みたいな懐かしい葛藤も思い出した。作者も相当香港のことを好きなのでは。街への愛がビシビシ伝わってくるのだけど、プロの作家の冷静な筆致とのバランスが絶妙。「つっけんどんだけど、いじわるじゃない」とあの街を表現しているのが、まさに!!という感じ。