エイプリルの七面鳥

家族と折り合いが悪くて疎遠になっていた娘が、余命わずかな母親を感謝祭のディナーに招待する話、となるといくらでも感傷的に劇的に作りこめそうだけど、意外と露悪的でリアルなところがかえって上品。さあ、お泣きなさい、という演出ではなく、語りすぎない映像の余白にあるものが心に沁みてきて泣かされた。
なかなか破天荒な病人であるところの母親と、昔ワル、今更生中っぽいエイプリルのキャラクターが面白いのはもちろん、二人のそばにいるそれぞれの男性がすごく良かった。エイプリルのボーイフレンドの、自分にできるかぎりのことを頑張って彼女をサポートする愛情が微笑ましいし、エイプリルの父親(オリバー・プラット。なんだか久しぶりに見た)は、淡々としてるんだけど、すっごい仲良し!とは言えない家族の一人一人を満遍なく愛している様子が滲んでいてホッとする。人生、何はなくともそういう人が傍にいてくれさえすればいいのかもねえ、とちょっとしんみりしてしまったよ。そして中国人の家族が出てくるので、思わぬところで聞ける北京語がなんとなく嬉しい。
こういう映画が存在していることを思うだけで、胸がほっこりとする。おすぎがイイ!という映画にしては珍しく同感!と思った映画です。これを日本で作るなら、「よし子のお節料理」ってかんじかな。