ウルトラ・ダラー

これ最近読んだ本の中で一番面白かった。9・11直後にNHKで見かける度、この人はいつ眠ってるんだろう?と、その身を案じずにはいられなかったワシントン支局の手嶋さんは、NHKをお辞めになってフリーのジャーナリストに転身されていたのですね。

偽札を軸にして描かれる北朝鮮の拉致や核問題から中国・台湾の関係まで、リアルな題材にまつわるエピソードが、どこまでフィクションなのか判別しかねるところがゾワゾワします。テレビで不思議なたたずまいを見せていたあの人は、いったいどこまで知っていて、どこまで計算して書いているのか、という素朴な疑問を抱かずにはいられないのが、リアリティと緊張感を高めているのではないかと。そして厚みのある国際関係の情報もさることながら、物語のアクセントになっている浮世絵やら諸々の雅な物事への造詣の深さに感嘆。テッシー、なかなかの粋人。

この本を香港に行く飛行機の中で読んでいたのだけど、香港の空港が「九龍国際空港」と書かれていたのが、ちょっと面白かった。弘法ニモ筆ノ誤リなのか、それともフィクション性を高めるための小ワザなのかな?「この飛行機は時空を超えて九龍サイドの旧・啓徳空港に着いちゃったりするのかしら」と少しワクワクしましたが普通にランタオ島に着陸しました。