渇き

ソン・ガンホが吸血鬼。おもしろかった〜!一本の映画のなかで作品の表情がどんどん変わるのがすごく面白かった。シリアス、ホラー、お色気、バイオレント、ファンタジー、シュール、ブラックなコメディ、といった要素が多面的にくるくると回転して物語をころがしていくのが小気味よい。最後の最後は純粋なラブストーリーのようで、ラストのショットがさりげなくも天才的。随所に漂うしれっとしたユーモアがかなり好みだった。

血がいっぱい出たり人をあやめる状況が頻発したりする映画が苦手(でもなぜか香港映画だとけっこう我慢できる)なので日ごろは避けているのだけれど、年に何本かは必ず、苦手な場面をぐっと耐えてでも見たいという衝動にかられる映画があって、そういうものはたいてい吟味のうえで足を運ぶだけあって、心に足跡をくっきりと残してくれる。たとえば去年だと、イングロリアス・バスターズとか母なる証明とかグラントリノとか。そしてこの映画も、がんばって見てヨカッタと思える逸品だった。痛そうだったりグロテスクだったりする場面でわたしが逃避行動に走った(そっと耳をふさぎ、目をつぶるか、ぜんぜん関係ないことを考えながら画面の角もしくは字幕だけををじっと見る)わりあいは全体の5分の1くらいで、こわがり克服レベル2の対応で済みました。

あと、「カステラ」はハングルでも「カステラ」と呼ぶことがわかったのが、なんとなくうれしい。韓国のカステラってどんなのだろう?