息もできない

むむむ。たしかに。息もできない。どうしようもない暴力の連鎖と、己のなかで膨れ上がる憎しみの苦しさと、どうあがいても結局は逃れられない血のつながりのやるせなさ。そういったものに追い詰められた袋小路を画面のこちらがわで見ているだけでも息ぐるしくなる。でも、その隙間にはときどき希望の小さい小さい花がぽつりと咲く瞬間があったり。主人公ふたりの人物造形、台詞、演技すべてがすばらしい。夜中の河原のシーンが、近年みた映画のなかでもっとも切実に感じられた名シーンだった。
あと、この映画を見ながら「なぜだろう。なぜか『メイド・イン・ホンコン』の衝撃を思い出す」と何度か思った。作品のベクトルはちょっと違うし、単にチンピラと女子高生、という組み合わせの所為かとは思うんだけど、なんとなく、映画のなかをさまよっている魂や痛みのようなものが同じであるようにも感じられたのでした。

監督・主演その他もろもろのヤン・イクチュンが、急激にわたしの中で気になる存在に。映画を観たあとにbepperたん経由でツイッターで知った彼の近影(丸メガネに蝶ネクタイ)とのものすごい落差に、一気にハートを打ち抜かれてしまった。