The Carrie Diaries / Candace Bushnell

アメリカの小さな町にすむ高校生の女の子が、恋や友情や家族や進路になやんだり、いろいろと痛い目に遭ったりしながら、クールに果敢に自分の人生を切りひらいていく物語。

ふつうに青春小説としてもなかなかおもしろいのだけど、この本がすごくスペシャルなのは、表紙に書かれているように"Meet Carrie before 'Sex and the City'"な物語であるところ。SATCのあのキャリーがいかにしてキャリーになったか、という源泉をうかがえるのが、読んでいてとてもわくわくする。スターウォーズでいうところのエピソード2あたり。無間道でいうと、無間道2。

かつてキャンディス・ブシュネルが書いたコラムのなかの一登場人物にすぎなかったキャリー・ブラッドショーが、映像化されて、世界中の女性のアイコンとして巨大な存在にふくれあがり、そしてまた作者のもとにかえってきて新たな物語が作られるというのも興味ぶかい。ドラマのキャリーとは異なる点が少なからずあって、ブシュネルがそこらへんをどう割りきりながら書いたのか気になる。

マニア的には、「あれ?キャリーがお父さんと暮らしてる・・・」とか、「高校時代の彼氏はXファイルのモルダーで、ほのぼのと仲良しだったのでは」とかもちろんつっこみたくなるし、体育会系の部活をやってたり、3人姉妹の長女という設定でけっこうしっかり者だったり、ジュリア・チャイルドの料理本を見ながら料理したり、と、斬新なかんじ。

とはいっても、視点や文章のシャープさや、個性たっぷりのお洒落マインド、恋愛においてすごく考えすぎちゃうところなどはまぎれもなくキャリーそのもので楽しい。まあ、たしかにチアリーダ的女子たちから見たらスノッブだろうなあ、というのもよくわかる。

ライターになりたい!という強い思いや、高校という社会でのミスフィットな感覚、この小さな町で自分の人生がまだ始まっていないと感じるジレンマ、大人になっても恋愛なんてできないんじゃないかという不安、ニューヨークへの憧れなどが述べられるたびに「大丈夫、大丈夫。あなたの夢はかなうし、とても素敵な人生になります」と神の目線であたたかく見守るきもちになった。

そしてこの小説、なんといっても、最後の一行が、もう、もう、本当に大好き!!SATCのファンならば確実にニヤリとしちゃうと思う。終盤のほうで、あれ?もしかしてそうくる?そうだったらいいなぁ・・・という予感がほのかにするんだけど、それが期待どおりに最後の最後の一行に見事に着地した瞬間、興奮のあまりぶわーっと涙が出た。最っ高っ!
日本語版も近々でるみたい(そのまま『キャリーの日記』ですって)なので、SATC好きにはかなりオススメな一冊です。