2012台湾&欧州 四日目:ヴェネツィア

marik2012-07-17

ホテルで朝食。水辺の遊歩道に面したテラスでごはんを食べながら、ガイドさんに引率された各国の観光客が続々と通り過ぎていくのを眺めているだけでも楽しい。最近、暑いところへの旅のワードローブはワンピースのみをごっそり持っていく、というシンプルな方式をとっていて、なかには短め丈の日本で街中で着るのは年齢的に厳しいかな、というものも多々含まれているのだけど、西洋人観光客の女性の多くが、年配の方でもミニ丈のワンピースをさらりと素敵に着こなしているので勇気づけられる。そういえば前日にホテルのエレベーターに乗り合わせたイギリス人のエレガントなおばあ様に、「そのドレスちょう素敵ですねー!」と思わず声をかけてしばしおしゃべりしたのだけど、朝食の席でふたたび顔を合わせたのでご挨拶。旦那さんからお孫さんまで勢ぞろいの楽しげなバカンスご一行だった。
あと、東洋人のグループの明白な見分け方として、日よけのためにさしている傘が日傘か雨傘かで日本人かそうでないかがわかるのが興味深い。雨傘って紫外線めっちゃ通すのでは?日本で普通に流通している、可憐でコンパクトな日傘をアジア全域に売り込むのはなかなかのビジネスチャンスなのではないかしら。

ホテルのパッケージにヴァポレット(水上バス)の一日乗り放題券的なものがついていたので、本日はそれを利用して島めぐり。目の前の船着き場からまずは、かつてガラス職人の島だったムラーノ島行きにのりこみ、のんびり船の旅。ムラーノ島につくと、人の流れについて無料のガラス工房見学ができるところになんとなくたどり着き、しばしガラス作り見学。あっつい工房のなかで頑固職人といった風情のおじさまが黙々と作業にとりくみ、若手がガラス作りのプロセスを英語で説明してくれるのを聞き、5分もいると暑くてギブアップ。あとは路地をぷらぷら歩いたりガラス屋さんを見てまわったり。ワイングラスかシャンパングラスを1組買って帰ろうと思ってたんだけど、ほとんど6個1セットという売り方なので、微妙に買いづらい。しかしさまざまなガラス細工をひたすら見て歩くだけでも目が歓ぶ。シャンデリアとか最強に素敵なものがいっぱい。豪邸を建てるときにはヴェネチアまでシャンデリアの買付に来よう。

次にブラーノ島いきの船に乗ると、朝の田園都市線レベルの混雑。なんとなくだけど、ヴェネチアって京都っぽいという感じがする。すごく歴史があって観光客がみっちり、という点においてのみかもしれないけれど。
ブラーノ島は漁師の島で、海から自分の家がすぐにわかるようにそれぞれの家をカラフルに塗り分けているのが特徴。色あいがまた素敵で、かなりときめく街並み!男衆が漁に出ているあいだ、女性たちはレース編みをしながら帰りを待つ、というならわしだったらしく、レース編みも伝統的に有名みたい。素敵なレース編みのお店があちこちにあって楽しい。
お昼はシーフード。イワシを頼んだら品切れで、なんかどでかい魚のグリルをオーダー。さらにシーフードのアペタイザー盛り合わせとリゾットなど注文。いずれも美味!だけど例によって、お店に入ってメニューが出てくるまで10分、ドリンクを聞きにくるまでさらに10分、料理が出てくるまで20分、みたいな欧州のペースにどうもまだ慣れない。ゆったりと何週間ものバカンスだったら無問題だけど、せっかちな弾丸トラベラーにとっては心の平静をたもつのに若干の努力が強いられるテンポ。香港ってなんでもスピード感があっていいよなあ。欧州に来るたびになぜかいつも香港が恋しくなる。
というわけでゆーーーーっくりとしたランチのあと、船でヴェネチア本島に戻る。帰りの船のなかで、周りの人たちが話す雑多な種類の言語が音楽のように入り混じるのを耳にしながらうつらうつらするのが最高に気持ち良かった。
ホテルに帰り着いてしばし休憩ののち、ホテル近辺を散策し、さらにサンマルコ広場の反対側のエリアに行くとブランド物のお店がけっこう並んでいてときめく。
広場ちかくのガラス屋で6個セットの色違いのグラスを両親宅用とわたしの家用とで分けっこして購入。買おうかどうしようか迷っていると、お店のひとががっつりまけてくれた。20代のころイタリアを一人旅したとき、「イタリアの男のひとは、女性にはとりあえず声をかけないと失礼と思っているから、女子一人で歩いてるといっぱい声をかけられて大変だから気を付けてね」といろんな人に言われて心して向かったのだけど、びーーっくりするくらい、誰ひとりとして声をかけてこなくて、ある意味震えあがったのですが、今回はけっこうイタリアの殿方たちにちやほや(礼儀上)されたのでなんとなく安心しました。そして娘がちやほやされる様子を見て母が安心していた・・・日ごろ心配かけてるからね。すまないね。
夕食はサンマルコ広場のカフェで。カズオ・イシグロの"Crooner"という、サンマルコ広場で演奏するバンドのギタリストが語り手の短編で、広場には複数のバンドがおのおのの店の前で演奏をするのだけど、広場は十分に広いのでそれぞれのバンドの音がお互いを邪魔しない、という一節があるのだけど、確かに全然邪魔しあっていない!あの小説のまんまだ!と感動。そしてどのバンドも演奏をとめている瞬間があって不思議に思っていると、広場の一角の時を告げる鐘が鳴り渡るという。鐘の音の邪魔にならないようにちゃんと計算してるんだね!
母になぜヴェネツィアがそんなに気になっていたのかと問うと、「むかし、オードリー・ヘップバーンサンマルコ広場を歩く映画を観て以来、行ってみたいと思っていた」とのこと。それは、おそらく、たぶん、キャサリン・ヘップバーンの『旅情』ではないかと思われます。