桃さんのしあわせ (桃姐)

marik2012-11-07

ル・シネマで香港映画が見られる幸せ。アン・ホイ監督の映画は『幽霊人間』しか観たことがなくて、今まで他の作品をチェックしていなかったことを軽く後悔するくらいにこの作品の語り口の絶妙さが心に響きました。エンドロールが終わっても涙が乾かなくて困った。
アンディ演じる主人公の家で60年前から家政婦として働き続けている桃姐が倒れ、雇い主に迷惑をかけたくないので自ら老人ホームに入り、彼女を気にかけるアンディとの関係が、それまで当たり前に家にいて感謝することもなかった家政婦さんから、かけがえのない家族そのもの存在になっていく、という機微が細やかに、うるさすぎなく描かれていて素晴らしい。桃姐が今までに積み重ねてきた誠実な時間が物語のなかにしっかり沁みこんでいて、切ないけれどあたたかい。デニー・イップの存在感と、アンディの抑えた演技が本当に素晴らしかった。
香港でよく雑居ビルに「○○護老院」という看板を見かけ、こんな雑然としたビルのなかの老人ホームって、どういう感じなんだろう?と思っていたので、映画のなかでまさにその実情を見ることができて、やるせない気持ちになりました。実際の老人ホームと、そこに住んでいるひとたちのなかで撮影しているようで、お年寄りたちの姿を見ているだけで胸にぐっとくるものがあり、大切なひとたちが老いていくということや、いつか訪れる自分自身の老後の身の振り方などについてしみじみと思いを馳せました。
はじめのほうでサモハンとかツイ・ハークとかが出てくるので、あら楽しい、と思ったら続々とカメオ出演者が。羅蘭おばさまが素敵。あと、桃姐がつくる食事がすごく美味しそう。魚の蒸したやつとか牛たんの煮込み!食べたい!

ル・シネマの今後のラインナップで"The Best Exotic Marigold Hotel"の予告編が流れてびっくり。いつだったか、この映画の感想を書いたとき、「ル・シネマあたりで上映されそう」と予言していたのです。ということを、ドヤ!と鼻息あらくご報告いたします。