エジプト・中東シリーズ 五日目:シャルム・エル・シェイク-ターバ-エイラット-エルサレム

早起きしてさくっとご飯たべてチェックアウト。手配してもらったタクシーに乗り込み、いざイスラエルとの国境へ出発。エジプトとイスラエル、隣同士なのに飛行機の直行便がないことを今回はじめて知りました。去年まではカイロ-エルサレムのフライトがあったみたいなんだけど、路線廃止になっていた。その他中東の国でイスラエルへの直行便があるのはヨルダンだけ。ということで出発前からイスラエルアラブ諸国の図式をまざまざと実感しておりました。

ビーチ沿いの景色しか見ていなかったザ・高級リゾートなシャルムエルシェイクですが、ホテルを出ると荒涼とした岩山が広がる、旧約聖書の世界っぽい景色。

一度ガソリンスタンドで休憩をはさみ3時間ほどのドライブ。途中でダハブ、ターバなどの同じく紅海リゾート地を通過。寡黙な運転手さんが、たまに観光名所が目に入ると教えてくれたり。まだ開発されきっていないビーチエリアが素朴でいいかんじ。このあたりもとにかく海がきれい。

ターバの果てにあるエジプトのイミグレーション前で下車。
建物に入る前に出国税の印紙を買って、中で「出国書類とか書かなくていいのかな?」とキョロキョロしてみたところ、記入台みたいなのはあるんだけど、とくに用紙はおいていない。黙ってパスポートコントロールの列に並んでいたら、前に並んでいたひとがパスポートを突き返されて書類を渡されていた。係員が列に並んでいる人間全員にわらわらと出国書類を渡し、皆だまって記入。
ということで、さようならエジプト!なかなかパンチがきいてたよ!
とことこと歩いて、イスラエル側のイミグレーションの入口で最初の質問タイム。
何しにイスラエルに来たの?どうしてイスラエルに来ようと思ったの?イスラエルではどこに行くつもり?なんでエルサレムに行くの?エルサレムに知り合いはいるの?何日いるの?イスラエルのあとはどこに行くの?武器は持ってない?
といった内容。でも感じのいい女性だったのでホッ。中に入って二度目の質問タイム。今度は男子。上とほぼ同じ質問。エルサレムはすごくいいところだって聞いているからI'm so excitedよ〜、と言ったら、「うん、エルサレムはいいとこだよ。ぼくも大好きだ。楽しんできてね」と、こちらもいい感じ。
荷物の検査のあとようやくパスポートコントロールのカウンターにたどりつき、三度目の質問タイムもほぼ同じ内容。担当の熟年のおばさまに「えー、一人なの?わたし一人旅とか無理ー。ほんと気をつけてねー!エンジョイ!」と言われ、なごやかにイスラエル入国。別室に隔離されて何時間も待たされる、などという話をよく聞いていたので戦々恐々としていたのだけれど、エジプト以外のアラブ諸国の入国スタンプがパスポートに押されていなかったのも幸いしたのかな。
逆に、イスラエルの入国スタンプが押されたわたしの今のパスポートでは、イエメン、シリア、レバノンリビアサウジアラビアスーダンオマーンに入国できない模様。イエメンで鮭釣りができない!そしてもしもサウジアラビアの石油王の第四夫人あたりになるような機会があったら、パスポートを申請し直すしかない。
税関の係員に書類を渡した後、「そういえば両替ってどこでできます?」と聞いたら、「この書類いっかい返すから、あっちの建物で両替しておいでー。で、またこっちに戻ってきて」と言われ、道路の反対側にある、エジプトへと出国するほうの建物の銀行で無事両替完了。
イスラエルの国境の町エイラットの中心地まで行くバスが1時間に1本あるらしいのだけど、バス停を見たら、ヘブライ文字のためどっちが始発か終点かわからない時刻表がペロンと貼ってあって、推測するに5分くらい前に出たっぽい。離れたところにタクシーが停まっているけれど、エジプトでタクシーに対する信用が一気に下落していたので、あと1時間くらい、ここで紅海でも眺めながら待とうという気に。曇り空でいまひとつ海全体の色がきれいに見えないけど、
紅海の対岸はヨルダン。ヨルダンお久しぶり!その節はお世話になりました!何日かしたらちょっと寄るね!と対岸に向けてご挨拶。
バス停の椅子に座って本よんだりしてたんだけど、すわり心地が悪くて疲れてきて、20分くらい経ったところで結局タクシーに乗車。エイラットのバスターミナルまで行ってもらうことに。エイラットも紅海リゾートでにぎわっていて、イルカと泳いだりできるっぽい。
ターミナルに到着し、チケット売り場にてバスのチケット情報が表示されたモニターを見たら、狙っていた午後2時半発くらいのエルサレム行きバスの残席がゼロ・・・。これに間に合うように、早起きして出てきたのに・・・。窓口に並んでいると、前後に兵隊さんが並んでいた。みな私用で移動するようで、バックパックを背負いつつ自動小銃を斜めがけしている。おしゃれ・・・。生まれて初めて自動小銃を近くでまじまじと観察した。
窓口で順番が回ってきたらやっぱり午後5時のチケットしか残ってなかったので仕方なくそちらを購入。その時点で12時。今回の旅は移動日が異常に非効率的になるさだめのよう。
夕方までどうしよう。このエリアでイルカと泳ぐ以外にしたいこともないけど寒い。とりあえず荷物預かり場にスーツケースを預け、身軽になってぱらぱらとガイドブックをめくる。昼ごはんは肉にしよう!と、中心地からちょっと離れた場所にある店をめざして徒歩移動開始。
エイラットの空港は超中心地にあって、飛行機の離着陸が間近で見られて楽しい!啓徳空港時代の香港に行ったことがなくて永遠の憧れなので、街中にある空港に出会うとすごいテンションあがる。
ステーキ屋をめざして地図に従って歩いていると、途中で歩道がなくなったりしてちょっと心細くなったり。基本、歩いているひともほとんどいなくて、車がびゅんびゅん通り過ぎ、飛行機がぎゅんぎゅん横を通る傍らをひたすら歩く。
20分弱歩いてようやくステーキ屋さん発見!イェス!お店からのサービスのカクテルがショットグラスでふるまわれ、さらにビールを飲みながらステーキを待つ。ステーキは・・・すんごい美味!というほどではないけれど、居心地がよいお店だった。
それでもバスの時間まであと3時間くらい、どうやって時間つぶそう・・・とまたガイドブックをぱらぱら。ちょっと離れたところにあるショッピングセンターでものぞいてみようかな。エジプトと違って、歩いていても誰も何も声をかけてこないのが快適。
延々と歩いてたどり着いたショッピングセンターの入口で荷物チェック。なかは、イオンモール的なかんじ。2階に海に面したテラスと休憩エリアを発見し、そこで読書しながらどうにか時間つぶし。
また延々と歩いてバスターミナルに戻り、預けていた荷物を受けとってバス乗り場のほうに行き、乗車の列らしきものに並ぶ。前に並んでいたポーランドカップルとしばしおしゃべり。ポーランドからエイラットに直行便があるんだって。ユダヤ・ネットワークで需要があるのかな?彼らも今日ついたばかりで本当はレンタカーでエルサレムまで行くつもりで車の予約をしてたんだけど、いざこっちに着いてみたら車が借りられなかった・・・これがイスラエルだねアハハー、と笑っていた。
バスに乗り込むと窓際の席でうれしいんだけど、もう陽はほぼ落ちている・・・イスラエル側からの死海の景色見たかったなー。

途中、20分ほどの休憩をはさみつつ、死海沿いのリゾート地のバス停でいくつか停まったりしつつ、4時間ほどのバスの旅。去年のタイでのビーチリゾート一人修行以来わたしのなかで流行っているのが、旅先での移動中に『安住紳一郎の日曜天国』の過去分のポッドキャストを聞きながらにやにやすること。タイで、香港で、北米で、南米で、そしてアフリカ大陸でも中東でも、安住さんのときに神がかったキレッキレのトークににやつきながら乗り物に乗っておりました。一人旅のおともに最高です。
そうやって、にち天を聞いてにやにやしながら真っ暗な死海を写真に収めて徒労に終わったりしているうちに、バスはエルサレムの街中に。
オレンジの街灯が石畳にうすぼんやりと明かりを投げかけるなかを歩き回っているのは、黒い山高帽、クルクルの長いもみあげ、黒いスーツのユダヤ正教徒の男性たち。幻想的なあかりのなかを同じ格好をした男の人たちがわらわらと行きかう様がものすごく不思議で、ワンダーランドに足を踏み入れたアリスのような気分でした。
わー、何ここ?!何この光景?!と興奮しているうちにバスターミナルに到着。運転手さんに路面電車の乗り場への行き方を教えてもらって下車。
電停っぽいところにたどりつき、チケットマシーンらしきものに向かうと英語表示が選べたので、なんとなくチケットが買えてほっとしたら、後ろに並んでいたおじいさんに「チケットを買うのを手伝ってくれないか」と言われ、一緒に機械操作した挙句「コインってこれでいいのかな?」とじゃらっとコインを差し出され、「わたしも今日イスラエルに着いたばっかりでコインの見分けがつかないんです」と笑いながら、どうにか無事おじいさんの切符も購入完了してバイバイ。
トラムが来たのでとっさに乗ろうとしたけれど、あれ、どっち方面のトラムに乗ればいいんだろう?と突然わからなくなり、近くを通りかかったひとに「このトラムはHadavidkaに行きますか?」と聞いたら、「反対側だよー」と連れていってくれて、待っているあいだも、もうすぐ来るからねー、とか君が降りるのは何番目の駅だよー、とか逐一声をかけてくれて親切。
なかなか混み合ったトラムに揺られ、目的地で降りたところでわたしはなぜか地球の歩き方の地図に乗っているホテルと自分が予約したホテルを勘違いしていて右往左往。いろんなひとに道を聞きまくってうろうろと彷徨った挙句、トラムをおりた地点のすぐ目の前に宿泊先があることにようやく気付いて脱力。
久しぶりにホステル的なところに泊まろうと思いネットで見つけたAbraham Hostel、トリップアドバイザーでも評判がよかったので予約してみました。フロントのスタッフもフレンドリー。廊下には、まさに今の自分にぴったりの、そして友人たちに舌打ちされそうなフレーズが書いてありました。

部屋は非常に簡素で狭く、シャワーを浴びるのに20分ほどタイマーをかけて水があたたまるのを待たねばならなかったりで、最近贅沢しすぎていたので慣れるのに時間を要した。ドライヤーが無いのでさらにどよーんとなったけど、フロントに行って聞いてみたらちゃんと貸してくれて安堵。部屋はとても清潔。暖房もがっつり効くし、wifiも使えるし、慣れてくると居心地いい。