ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

泣きすぎて目がだるくなってしまった。この原作、ものすごくまえに読んで、ありえないほど内容を忘れてた(6年前だった。ちゃんと感想かいてたのに・・・http://d.hatena.ne.jp/marik/20060924)ので、かなり新鮮な気持ちで鑑賞できて得した気分。うっすらと記憶に残っていた、ヘンな本だなー、と思ったヘンな感じが反映された、一筋縄ではいかない作品でよかったです。サンドラ・ブロックがとても良かった。ただひたすら悲しみに打ちひしがれているだけの母親かと思いきや意外な奮闘を見せていたところがぐっと来ました。

 父の初七日 (父後七日)

台北でバリバリ働く主人公の父親が亡くなり、故郷での父の葬儀を執り行うにあたり昔ながらの葬式のやり方なのでけっこういろいろ儀式があってなかなか大変よ!というお話。
悲嘆にくれるヒマもないくらい、毎日なんやかんやと儀式に終われるさまがユーモラスに描かれているのだけど、たまに不意打ちで美しい瞬間が訪れて胸をうたれる。父親の遺影をバイクで運びながら、かつてふたりでバイクに乗っていたときのことを思い出すところで涙腺が大崩壊。あの場面の父と娘のやりとりすべてが本当に愛しかったなー。あと、近所のおじちゃんがお兄ちゃんにグアバをあげるところも、さりげないんだけど、台湾の人情がぎゅっと濃縮されているように思えてキュンときた。おそらく20代であろう兄妹が、親戚の叔父さんの指導に素直に従いながら、まだ早すぎる父との別れの儀式を淡々とこなす姿も泣ける。この映画、東京に来て以来はじめて映画館で観客が私一人という贅沢を味わえたので、まわりに憚ることなく嗚咽し、存分に鼻をかむことができてよかった。
ごく普通の家族のごく普通の愛情が静かに感じられる、かなり好きな映画でした。主人公の女子(大久保さん+アジアンの隅田さんといったビジュアル)がなかなか味がある女優さんだった。台湾映画を見ているとたまにある、耳は北京語を聞き取ろうとする(ほとんど聞き取れないのが常)のに、聞こえてくるのがほとんど台湾語で脳がちょっと混乱するという状態がなんだか楽しい。最後のほうで香港が突然でてきて、中環のCOACHあたりの大好きな景色や空港が映ったりするのでときめいてしまった。

 TIME/タイム

なんか、こう、世知辛いきもちになるわー。持たざる者は常に死の瀬戸際にいるというギリギリ感が、もう、なんとも。毎朝めざめるたびに自分の寿命を確認する世知辛さに比べたら、毎朝めざめた瞬間にその日の仕事の段取りで頭がいっぱいになるくらい、まだマシなほうだと考えることにしました。ポジティブなライフハック。しかしこの映画を観終わったあと、思わず自分の左腕を確認しちゃうよね。わたしはたぶん、そこそこの残り時間をもらっては、もらったはしからがんがん使いまくって毎月末になるとカツカツで死にかけるタイプ。
25歳の時代からずいぶん遠くへやってきた身でそう認めるのは切なく悔しいことではあるけれど、見た目が25歳から年をとらない人たちばかりの世界というのは、やっぱり見た目的に美しいものであることは認めざるをえないね。最近まさかのカミングアウトで世界中の女子たちをしょんぼりさせたマット・ボマー氏が見目麗しくて素敵。
アイディアとビジュアルありきで、お話はまあ、どう転がってもどうでもいい感じだったけど、ボニー&クライド的展開はなかなか面白かったです。