父の初七日 (父後七日)

台北でバリバリ働く主人公の父親が亡くなり、故郷での父の葬儀を執り行うにあたり昔ながらの葬式のやり方なのでけっこういろいろ儀式があってなかなか大変よ!というお話。
悲嘆にくれるヒマもないくらい、毎日なんやかんやと儀式に終われるさまがユーモラスに描かれているのだけど、たまに不意打ちで美しい瞬間が訪れて胸をうたれる。父親の遺影をバイクで運びながら、かつてふたりでバイクに乗っていたときのことを思い出すところで涙腺が大崩壊。あの場面の父と娘のやりとりすべてが本当に愛しかったなー。あと、近所のおじちゃんがお兄ちゃんにグアバをあげるところも、さりげないんだけど、台湾の人情がぎゅっと濃縮されているように思えてキュンときた。おそらく20代であろう兄妹が、親戚の叔父さんの指導に素直に従いながら、まだ早すぎる父との別れの儀式を淡々とこなす姿も泣ける。この映画、東京に来て以来はじめて映画館で観客が私一人という贅沢を味わえたので、まわりに憚ることなく嗚咽し、存分に鼻をかむことができてよかった。
ごく普通の家族のごく普通の愛情が静かに感じられる、かなり好きな映画でした。主人公の女子(大久保さん+アジアンの隅田さんといったビジュアル)がなかなか味がある女優さんだった。台湾映画を見ているとたまにある、耳は北京語を聞き取ろうとする(ほとんど聞き取れないのが常)のに、聞こえてくるのがほとんど台湾語で脳がちょっと混乱するという状態がなんだか楽しい。最後のほうで香港が突然でてきて、中環のCOACHあたりの大好きな景色や空港が映ったりするのでときめいてしまった。