風が強く吹いている/三浦しをん 

まっすぐな、いい小説だった。箱根駅伝出場を目指す10人の大学生の個性の成り立ちが明確で、よくできている。彼らと一緒になって「無理なんじゃないかなあ・・・でも、この人についていったらなんとかなるのかなあ・・・いや、でも無理?どうなの?」と逡巡し、ときに心地のよい風を感じ、自分が走る先に誰かが待っていることの喜びを共にかみ締めました。
三浦しをんの安定した筆致の中に、走ること=生きることの意味を問いかけ続け、一緒に答えを見つけようとする暖かい鼓動がずっと聞こえるようで、何度も目頭が熱くなった。他人との競り合いに勝つことだけが勝利ではない、というメッセージに、ちょっと自分の足元を見つめなおしたくなる思い。しみじみと美しい、清清しい読後感でした。