冬の欧州ひとり旅 十一日目 ベルギー

中央駅からアントワープ行きの電車に乗る。こじんまりとした可憐な家々や、冬枯れの寂しい林や、草を食む牛などを車窓に望みながら50分ほどで到着。
アントワープはダイヤモンドの流通が盛んらしく、駅のそばには貴金属屋が沢山並んでいる。そしてここにもやっぱりH&M。セールでごった返す店内に入ると、割引対象外ではあるものの、リスボンですごく気に入ったのに合うサイズが全然無くてあきらめたスカートの小さめサイズが揃っていて胸が高鳴った。慌てて試着して、無事フィット。いやっほう!リスボンで気に入ったスカートをアントワープで買うのって、江戸の仇を長崎で討つ、の資本主義ヴァージョンみたい。

到着時から降り始めた雨がどんどん激しくなり、逃げるようにノートルダム大聖堂へ。寒さに震えながら、気分はネロ。子供のころにカルピス名作劇場で見たときは、小さな教会だったような気がしたけれど、かなり大きな、荘厳な寺院だった。ネロが焦がれたルーベンスの絵を前に立つと、そこから動きがたい気持ちに。あと、絵の裏側にさりげなく描かれている、幼な子イエスを肩に乗せた聖クリストファーの絵が良かった。ネロとパトラッシュが住んでいる、という設定の町はアントワープから市電でちょっと行ったところにあるらしく、その町に立っている彼らの銅像が絵葉書として教会の売店に置いてあった。「ネロと パトラッシュ」と日本語で描かれたハガキはなかなかシュールでよかった。

港町アントワープをもう少し探索しようと思いつつ、雨と寒さに激しくやる気を無くし、早々に駅に戻り、発車直前のブリュッセル行きの列車に運よく乗車。と思ったら、往路と窓の外の景色や、通り過ぎる駅名が微妙に違う。どこへ連れて行かれるんだろう・・・とドキドキしていたけれど、最終的にはちゃんと中央駅に到着してヨカッタ。

部屋に戻ってまたしてもビール&読書。夕食も、近くのデリで買ったサラダやスープで済ませた。贅沢な話だけど、毎日新しいものを見て、知らない場所を訪れるがゆえに起こる旅疲れの時期が来たような。

前の晩に見た"Just the Two of Us"がいよいよすごいことになっていた。サラ・ブライトマン(あるいはそっくりさん)が相方(マークという人。ちょっとイゴール・ボブチャンチン似)と歌った"Music of the Night"でまさかの脱落。オペラ座の怪人だよ!?オリジナルキャストだよ?おそるべし。マークもすごいな。「サラと一緒にこの歌を歌うなんて、たいした度胸だよ」と審査員に言われていた。そして、彼らの歌を酷評した審査員が「サラが歌う”Music of the Night"にケチつけるなんて、たいした度胸だよ」と司会者に言われていた。ほんとだよまったく。