塚っちゃんが裸の大将!

戦争ですべてを奪われた老人リンさんが、息子夫婦が遺した赤ん坊と小さなかばんだけを手にし、祖国を離れる難民船の甲板にじっと立つ。遠ざかる故郷をじっと見つめる。異国にたどりつき、難民収容所に落ち着いたリンさんは、赤ちゃんを大事に大事に胸にかきいだきながら、耳慣れない言葉と見慣れない景色の中を、失われた故郷や家族を想いながら歩く。ある日、公園のベンチで出会ったのは、妻を亡くした男。リンさんと男は、互いの言葉を理解しないながらも心を通い合わせていく。

こんなに完璧な小説には、なかなか出会えない。美しい言葉がつむぎだす、失われた景色やリンさんのつましいながらも丁寧な暮らしぶりが、しっとりと静かに心に染み入り、後半での怒涛の展開は、映像ではなく、文字でしか味わえない驚きと切なさ。そして、灰色の景色にそっと光が差し込むような希望。一生大事にしたい本。

ゴメンナサイ。この本を読むまで、テレサ・テン=スパイ説をほんのりと信じていました。美しい歌声に恵まれた一人の女性の鮮やかで繊細な人生が、丁寧に書き記されていた。
両岸問題の過渡期にスターとして名を上げ人々に愛されたがゆえに、政治的なかけひきのうねりの中に巻き込まれてしまったテレサ。文庫版あとがきで有田さんが書いていた、「もしも北京オリンピックテレサ・テンが歌ったとしたら」というくだりが泣けた。現在、ジェイ・チョウさんなどの台湾の人気歌手が普通に中国でコンサートを行っているのも、彼女が切り開こうとした道の上にあるのだなあ、としみじみ思いました。

視覚に障害を持ち一人で暮らす女性と、その家に隠れた逃亡者。二人が抱える冷え冷えとした孤独に戸惑いながらページをめくるうちに、そっと心に火が点り、その火が少しずつ少しずつ大きく暖かくなっていくような小説だった。チェン・ポーリン君ご出演の映画も見てみたくなった。文字だけが描写しうえる細かな心理描写を、どのように映像化したのか興味深い。

オンライン翻訳ってほんと笑えるよね!というファクターを、エンターテイメントにまで高めた快作。オリジナルの日本語と落ち着いた風情の挿絵の次のページに、機械が翻訳した英語訳&日本語訳、というレイアウトになっていて、英訳部分で爆笑、日本語訳でさらに爆笑、そして、翻訳バージョンから喚起されるイメージをビジュアル化したパンキッシュな挿絵がさらに笑えるという、何段階もの笑いが襲ってくるのでした。

かぐや姫→as soon as it smelled, princess →匂いをかがれるとすぐに、プリンセス」という変換はほんと秀逸。オリジナルの文章に「かぐや姫」という単語が何度も何度も出てくるので、訳文にもしつこく"as soon as it smelled, Princess"と何度も何度も出てくるところが、芸人の繰り返し芸のようで本当に可笑しかった。

これ、日本のむかし話や名作文学を題材に延々と作ってほしいー。