旅先で読んだ本

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ
エレガントでさびしい語りにうっとりしていると、おもむろに狂気の淵をのぞきこんでしまい圧倒され、最後は切なくもほんのりと光がさした。ただただ、素晴らしい。

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫) ダライ・ラマ
この中に描かれている美しいチベットの光景が失われてしまったことや、残虐な侵略や文化の破壊の様子がつくづく悲しい。第三者ながらに、こうして書籍に残されたかつてのチベットを心に思い描いたりすることや、現状や真実を知ろうとする心意気は忘れないようにしたいと思った。幼い日を回想する文章の端々に見えるダライ・ラマのお茶目さが魅力的。数年前の来日講演会に行った折、ダライ・ラマが最後に唱えた般若心経の美しく厳かな響きには本当に心が震えました。

ボクはワインが飲めない (角川文庫)宮藤官九郎
1ページ目ですでに、あれ?これ、読んだことあるよね?・・・と思って裏表紙を見たら、「私のワインは体から出てくるの」とその続編をまとめた一冊と書いてあって愕然。くんく!わたし持ってるよ両方とも!時すでに遅く旅の空の下。でも久しぶりに読みなおしてみても可笑しくて、ホテルの部屋の前を掃き掃除してくれているホウキの音が聞こえる中で読んでいて「ワハハハ」と思わず声を出して笑ったら、ホウキの音がピタリと止まったのだった。