Precious: Based on the Novel Push/Sapphire

去年のサンダンス映画祭でグランプリをとった"Precious"の原作です。深い闇の果てに力強い希望の光が見える、いい小説だった。

両親による暴力と性的虐待をうけつづけ、12歳のときに父親との間にできた子どもを産み、16歳で二人めを妊娠。学校でも先生や子どもたちに見放された存在でありつづけてきた16歳のプレシャス・ジョーンズ。二人めの子どもを妊娠した折に学校を追いだされた彼女が、オルタナティブ・スクール(特殊なカリキュラムで運営される少人数制のクラスで、読み書きができない等の、基礎的な学力を身につけるためのサポートが必要な生徒のための学校というかんじなのかな?)に通うことになり、ミズ・レインという教師や、それぞれに複雑な過去を持つ同級生たちと出会い、日記や詩を書くことで自分の言葉を会得し、一人で子どもを産み育てながら自分の居場所を見つけていく物語。

まわりの人たちからさげすまれ、だれからも必要とされていないという思いの中でずっと生きてきたプレシャス(この皮肉な名前がまたせつない)の心の叫びに何度も胸を締め付けられた。そして彼女が人間らしく生きたいと願い、勉強を続け、まわりから手を差し伸べられながら少しずつ人生をよきほうへと進めていく様子に、希望が人を強くするのだとしみじみ感じ入る。

プレシャスは読み書きが苦手、という設定での彼女の一人語りなので、地の文が非常に独特。文法も単語もなかなかに自由で、黒人英語のリズミカルさとあいまって、すごく読みにくいような、でもそれを解読するのが楽しいような、不思議な読みごこち。そして彼女が勉強を続けていくにつれ、単語のスペルがさりげなく正しくなったりするのがぐっと来た。

映画のほうも楽しみ!日本ではいつごろ公開なんだろ?ノーメイクのマライア姐さんと、レニクラの出演が気になる。