愛する人

marik2011-02-09

この作品の原題は何だろ?と思いながら観ていて、最後に出てきたタイトルが"Mother and Child"だったので、そのまますぎる!と盛大にコケそうになったのだけど、コクと深みのある良質な作品であるからこそ、シンプルな題名がまたひき立つのかもねえ、と納得。
シビアで冷静な目線のなかに静かな温かさが感じられるロドリゴ・ガルシアの作風が、ほんとうにしみじみと大好きだと思った。見るものをわざわざ泣かそうとしない、そぎ落とされた表現に逆にいつも心をつかまれて、のちのちまで思い出し泣きするくらいひきずってしまう余韻がたまらない。

37年前に14歳で産んですぐに養子に出した娘のことが片時も忘れられない母親(アネット・ベニング)と、弁護士になって事務所を転々としつつ、母の故郷であるらしいというLAに結局は何度も戻ってくる娘(なおみワッツ)。交わらないふたりの日々を描きながら、ふしぎと、ああ親子だなあ、と思わずにはいられないなにかつながるものを感じた。とくに、ふたりとも他者とのコミュニケーションがびっくりするぐらいヘタなところとか。アネット・ベニングにいたっては、このひとの口元に笑うという機能はついているのかしら?と思ってしまうほどの不機嫌顔の連続だったのだけど、後半ちょっとまた印象が変わっていくところがよかった。
なおみちゃんがとてもきれいで悲しくて良い。エレベーターのなかで声を出さずに泣くところがなぜか妙に印象的で、思い出すとまた涙腺がゆるんじゃう。