サード・パーソン

marik2014-07-10

観ているあいだずっと、この映画の世界がすごく好きー!とじわじわ噛みしめていました。セリフや映像で語りすぎるわけではないのに各登場人物の心の動きが伝わってくる繊細な演出や、シンプルなエピソードの積み重ねで物語を紡ぎ、やがて大きなうねりとなってクライマックスに持っていく構成がすばらしい。殺伐としていてテンションが低くて難解な『ラブ・アクチュアリー』というか。パリ、ローマ、ニューヨークの3組の男女のストーリーが平行して語られる群像劇と思いきや、徐々にあれ?あれ?と霞に覆われていく不思議な感覚。タイトルが示す三人称の視点がどこにあるか、というところに重きを置くとなんとなく整理される気もする。あと、頭が混乱しはじめると、各都市ごとの景色や空気感がよすがとなり、えーと、この人はこの街にいるんだよね?あってるよね?とか悩みながら見るのも楽しい。各都市のストーリの切り替わりで、登場人物の動作や心情や音楽が重なる演出がちょこちょこ出てくるのが、映像ならではの心地よさ。力量のないクリエイターが作ったら、ただ思わせぶりなだけでスカスカな作品になっちゃう危険性があると思うんだけど、ポール・ハギスの見事な匠の技にたっぷり酔いしれたあとの、創作とは、愛とは、人間とはなんぞや?という終わらない問いかけのなかに放り出される不思議な結末に、うん、よくわかんなかったけど、すごくよかったよ!と清々しい気持ちになりました。映画を反芻しながら、作品内でのあっちとそっちの境目をあれこれ推測するのも楽しい。わたしはエイドリアン・ブロディがどうも苦手なので、グランドブタペストホテルと立て続けにお目にかかったのもあって、演技はほんと完璧なんだけど、やっぱり苦手だ。。。とぐったりしたのが唯一の難点。キム・ベイシンガーを久しぶりに見た。人間のどうしようもなさと悲しさと美しさが凝縮されているようなクニちゃん(ミラ・クニス)の役柄が一番心に響いた。