パディントン


パディちゃん(こどものころパディントンベアをそう呼んでいた)がケモノけものしてて絵のイメージと違う。。。こわい。。。って思ってたんだけど、本編を見たらあのビジュアルで正解だったね、と納得!ファンタジーの熊をぎりぎりまでリアルに近づけることで、パディントンの喜怒哀楽がより胸にひびく仕様になっておりました。


基本ハッピーで軽やかで笑わせどころが多いんだけど、ロンドンにひとりぼっちでやってきたパディちゃんの寂しさや、”home”を探し求める不安や健気さに胸をきゅうきゅう絞られて、7割方泣きながら観てた。

愉快でかわいい子ども向け映画でありながら、移民や難民と彼らを受け入れる側それぞれの心情やあるべき姿も描かれているように感じられました。相手を出自や属性で判断して拒絶するのではなく、その人柄(熊柄)や個としての姿をきちんと見つめ、仲良くなれそうだったら仲良くすればいいさ!みたいな善のメッセージが押しつけがましくなく陽気にこめられているような。


セットや小道具もセンス良くて凝っていて、わくわくするギミックがいっぱい。アクションや展開もテンポがいいし、愛がいっぱいのストーリーだけど甘ったるくない。この映画、なかなかの名作かもしれない。

ブラウンさん役のダウントン・アビーの旦那様がすごく体をはってがんばっててウケる。あと、ニコール・キッドマン様がミッション・インポッシブルなアクションを見せたり、別のシーンでそのまんまミッション・インポッシブルのテーマ曲が流れたり、ニコマン様の元ご主人に軽くケンカ売ってるかんじが最高。

この実写化の第一報ではコリン・ファースパディントンの声をあてると聞いていたのに、いつのまにかベン・ウィショーくんに変わってて、あれは夢だったのかな?と思って調べたら、制作の途中で「なんか、ちょっと、さすがに声がおっさんすぎじゃない?」とコリンや製作者たちが気づいてしまい、平和的に降板したとのこと。なるほど。ウィショーくんのやわらかい声が小熊の役にすごく合ってたので余計に泣けたのだと思う。コリンと監督たちの英断もすばらしいね。

こちらの予告編はなぜかコリンの声なので貴重!ぜんぜん印象が違う。コリン様バージョンもフルで観てみたい。




くまのパディントン」の本でいまだにすごく印象に残ってるのは、ペルーを離れるときにルーシーおばさんが紙に書いてパディちゃんの胸にぶらさげてあげた”Please look after this bear. Thank you”。という文言を「どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします」とした日本語訳。愛情と切なさがにじみ出てる名訳だと思う。児童文学って元の英語が簡単な分、日本語に翻訳するときの言語センスが大人向けの文章よりもずっと問われる難しい分野だよな、ということを久々に思い出しました。