ザ・ウォーク


1974年、完成間近のツインタワーのあいだを綱渡りしたフランス人の実話。この案件、『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画として何年か前に観たときは、実際に綱渡りをする映像は無しで本人や関係者の話で構成されていて、わりとまったりしていたので途中でうたたね寝しちゃったりしたのですが、さすがにロバート・ゼメキス監督の手にかかると寝てる場合じゃなかった。

みんな大好き『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ』を作ってくれたゼメキスらしい、高度な映像技術への驚きとシンプルながら旨みのある物語を美味しくいただける構成で、不可能が可能になり、強い信念が成就する美しい時間が描かれていてたいへん素晴らしかったです。高いところは楽しいね!

ジョセフ・ゴードン=レヴィットくんのフランス語&フランスなまりの英語がキュート。エレガントかつ破天荒な芸術を体現するアーティスティックな雰囲気もよく合ってた。実際にフィリップ・プティ(ご本人)に綱渡りを習ったのね。綱渡りができたら人生ちょっと楽しそう。どこかで習えるかな?

物語のもうひとつの主役は、ワールドトレードセンター。できたてのビルにフィリップ・プティのcoup(クーデター。彼はこの計画のことをそう呼んでいた)が命を吹き込んだかのような流れや、不法進入されたビル側が騒動後に彼に入場許可証を渡した粋な計らいとその有効期限が"Forever"であったことの切なさ、そしてラストシーンで誇らしげに輝きつづけるツインタワーの姿に涙。
ワールドトレードセンターを想うとき、まっさきに頭脳に浮かぶのはあの悲しい光景だけど、わたしが初めてNYに行って街に一目ぼれした瞬間にそこにあった、生き生きとしたワールドトレードセンターのあの姿も、決して忘れないでいようとあらためて思った。

と、しみじみと感動を噛みしめながら乗ったエレベーターで一緒だった20歳前後くらいの女子ふたりの会話で「でもあのビルってもう無くなったみたいなんだよね、テロで」と片方が言うのでおお、若いなーと思った瞬間にもうひとりが放った「えー、そうなのー。知らなーい」という言葉が、地上400mの高さで綱渡りする3D映像よりはるかに空恐ろしかった。。。