ブルックリン


なぜだか、なんだか『17歳の肖像』を思い出すなあ、と何度も思いながら観おわったあと、脚本が同じニック・ホーンビィであることを知り超超超納得!だーよーねー!!大人の階段を登っている真っ最中の女の子の、蒼い輝きと無意識のしたたかさを、男性目線でちょっとファンシーに描くこのかんじ。あと、アカデミー賞にいくつかノミネートされていたので、そこそこ深い物語かと思いきやわりと小粒であっさりしているところも、あの映画に似てると思ったのでした。こちらの作品は、心にうっすらじわっとしみて、後味さわやかでよかったです。

1950年代のアイルランドで、いい職に就くチャンスもなく閉塞的な環境で暮らす20歳の主人公エイリシュが、単身アメリカにわたりブルックリンで生活し、ホームシックに苛まれる様子に、己の上京当時を勝手に重ねあわせて非常に懐かしい心もちに。ホームシックの一番の薬は恋愛だよねやっぱり。
アメリカでの居場所を切り開いていくエイリシュを、母親のような気持ちでほっこりと見守っていたのだけど、アイルランドに一時帰国したあとの展開は、なかなかのしたたか祭りですよ。その気持ち、よくわかるけど!若さゆえの純粋さと浅薄さ、女のズルさにやや共感。

ふたりの主要な男の子たちが、どちらもピュアで紳士的ですごくいい子!子犬のような目の、めちゃくちゃ優しいイタリア系男子。ああいう男性こそまさしくファンタジー。勉強や生活の邪魔はしたくないけど一緒にいたいから、せめて家まで送らせて!とか、彼女の前であえて自分の大好きな野球の話とかしない心遣いとか、しびれる。
アイルランド側のドーナル・グリーソンくんの控えめさもチャーミング。Domhnallくん(「ドーナル」のスペルがなかなか覚えられない)、役柄によって全然印象が変わるので惹きつけられる。若手でいま一番すき。

全体を彩る50年代のファッションも、心が洗われるような清楚さが素敵で、とくに、いかにもアイリッシュなグリーンが印象的に使われているところが目にやさしい。ビクラムヨガ(緑は禁忌)のスタジオには着て行けないけど。

アイルランド人がアメリカに移民するこの物語、たとえば現代に置き換えてメキシコやシリアの女の子を主人公に同じような物語を作ったとき、世界はどう批評するのかな、と考えちゃったりもしました。