シング・ストリート 未来へのうた


先週の『ブルックリン』に続き、不況にあえぐアイルランドに再会。こちらは1985年が舞台で、一目ぼれした女の子の気を引くために勢いでバンドを結成する15歳男子のおはなし。クスクス笑えて、泣けて、とてもまばゆい青春音楽映画でした。

a-ha、デュラン・デュランジェネシス(劇中で激しくディスられるフィル・コリンズ)、ホール&オーツなどなど80年代ミュージックの懐かしさと、ヒット曲のエッセンスをうまくパクっ...取り入れた高校生バンドのオリジナルの曲がどれもキャッチーで楽しい。Apple Musicで速攻サウンドトラックをダウンロードしてしまった。

両親の不仲に心がヒリっとしたり、学費の安い学校に転校して散々な目に遭ったりしつつ、音楽と恋が光となって主人公を照らし、少年が自我を確立していくさまが、もう、まぶしくて、甘酸っぱくて、爽やかで、心にしみちゃうの!人生の喜びと悲しみを絞り出すように音楽を生み出していく姿にぐっとくる。
主人公の男の子、最初に"Take On Me"を口ずさんだときは大丈夫かいな?って心配になったけど、演技か(あたりまえ)!とても心地よい歌声。フレッシュ感にあふれてるけど、30年後にはベネチオ・デル・トロっぽい渋さを醸し出しそう。

バンドメンバーの子たちも皆すごくいい。それぞれが個性的で、でも学校では目立つタイプではなくて、とても幼く見えるんだけど、楽器の腕が優れているギャップがかわいい。この子たちみんな、とにかく幸せになってほしいなあ、幸せな大人になってほしいなあ、と願いながら観ていました。なんなら、「彼らがのちのU2である」とやさしい嘘をつかれてもいい(人数も時代も違います)。

彼らとそう年代が離れていない時代の同じ年ごろにバンドをやっていたので、あの独特の空気感の懐かしさにむせかえりそうだった。ライブで頭にバンダナまいてキーボード弾きながらプリプリの『M』をへったくそに歌った黒歴史をふと思い出して、あ"あ"ぁ"ぁ"ーーー!と、映画館の床を悶々と転げまわりそうになりました。

ヒロインは歌わないんだけど、声が清潔感があって好きだった。春風に揺れる鈴みたいな声。
主人公のお兄ちゃんもよかったなー。屈託をちょっと爆発させたりもするけれど、弟に希望を託し、導き、送り出す姿に泣けてしまう。
クライマックスで流れるアダム・レヴィーンの”Go Now”が、自分の人生を生きるんだ!行くんだ!行くなら今だ!振り返るな!って感じの、お兄ちゃんの視点っぽい歌詞で、しみちゃうの!
この曲のMVに映画のいい場面がぜんぶ入っててまた胸が熱くなる。