この世界の片隅に/マイ・ベスト・フレンド

この世界の片隅に

ほわーんとした優しい絵柄で描かれる気骨のある深い物語。戦時中の呉という舞台設定、広島との距離などにはらはらしながらも、毎日を普通に、ときに笑いながら生きている人たちの姿がいとおしい。
空襲が日常の一部と化していく様子に、見ているほうもじわじわと心を追い詰められる心もちだったのだけれど、今、まさに、この現実の世界の片隅で、あのような絶え間ない脅威にさらされている人たちがいるのだということをふと考えたりもしました。
あと、能年ちゃん(って呼びたい!呼ばせてあげて!)の声の演技がすごくよくて、どうか能年ちゃんにもっと女優の仕事を!だれか!と思わずにはいられない。

●マイ・ベスト・フレンド

ジェーン・スーの名言「女友だちは、元本割れしない唯一の資産」は、日々の生活のなかでことあるごとに思い出し、この財産に関してはわたしの人生も十分に豊かであるとしみじみ感謝するのが常で、この映画を観ているあいだもずっと頭のなかをこのフレーズが渦巻いていました。
なんてことのない時間、くだらない笑いが積み重なってできあがっていく、きれいごとや損得やマウンティングではない女同士のリアルな心の響きあいが胸をうつ作品でした。登場人物が基本、ちょっとふざけたことばかり言うところがいい。

トニ・コレットの、女としての自分の自己肯定力の高さが半端なくて、これくらいザ・女として自信たっぷりにふるまえるのはすごいなあ、と感心してしまった。その分、病がすすむ姿が切なくもあるのだけれど。そしてドリュー・バリモアの地に足がついた感に安堵する。『嵐が丘』がところどころでキーポイントになってるのも好き!