桜姫(7月版)@シアターコクーン

美しすぎて泣ける。数年前にコクーンで見た「桜姫」とはまた異なる演出で、進化する歌舞伎のしなやかさにシビれた。コクーン歌舞伎がある時代に生まれてほんとうによかった。あと、今年は同じ「桜姫」のお題で現代劇と歌舞伎と2ヶ月続けて見ることができたのもすごくよかった。先月の舞台も切なさと情熱が渦巻くよい作品だと思ったけど、歌舞伎の、露骨すぎず多くを語りすぎずに様式美に物語を託す美しさが、今回あらためてよく分かった。それにしても七之助の桜姫の可憐なこと!桜姫の女子力の高さに学ぶところが多かった。

今回は舞台の上の後方に設置された客席で観たのだけど、コクーンの客席と向かい合う形なので、役者さんたちは普段、こういう光景を見ながら舞台に立っているのだなあ、と勝手にシュミレーションできたりして面白かった。基本的に役者の背中を見ることになるのが多くてちょっと残念なところもあるのだけど、冒頭からいきなり、すぐそばで中村屋親子の芝居が始まるのがこのうえない贅沢で、目の前に突然あらわれる非現実的な世界の美しさに涙がでた。あと、家の中という設定のシーンで、舞台に照らされた直線上の光で家のしきりが表示される場面で、ドアの開け閉めの細かい芝居をするとドアの線がすっと現れたり消えたりするのが、他の席からは見えないひっそりとしたサービスで楽しかった。