週末に読んだ本

ツアー1989ツアー1989
1989年に行われた香港観光ツアーで、一人の青年が行方不明になった。という軸を中心に、彼と関わりがあるような無いような人たちの人生の断片が描かれ、青年は今どこで何を?というのが少しずつ解き明かされていきます。読みながら、出てくる人たちの記憶の霧の中に一緒に分け入ってモヤモヤと考えてしまうような、こころもとない空気が始終ただようかんじが心地よい。文中に出てくる「迷子つきツアー」(ツアー客の中で、途中で消えて一緒に帰国しない客を一人手配することにより、後々ほかのツアー客にとってその不思議な感覚が旅の良い思い出になる、というのが売りのツアー)って、実在するものだと思って途中まで読んでました。こういう虚構の作り上げ方、すごく好み。

香港大好き!んごーごいひょーんごーん(我愛香港)!といつもピーピー騒いでいるものの、わたしは返還前の香港に行ったことがなく、そのことをいつも残念に思っています。自分にとって一番いいタイミングで香港に行って、いいタイミングで香港を好きになったのでそれはそれで良いのだけど、やっぱりこの本の中に出てくるような、借り物の土地として刹那的に怪しく輝く香港を見てみたかったよ!と、あらためて切望せずにはいられないのでした。

まほろ駅前多田便利軒まほろ駅前多田便利軒
どこにでもありそうな街で、どこにもでもいそうでいなさそうな男二人が、便利屋の仕事を通していくつかの人生と交差する物語。とてもよくできている、としか言いようがないまとまりの良さ。確実に映画か連続ドラマ化されるのではないかしら。全てがほどよくドラマチックで、ほどよく胸に響く。三浦しをんの文章は、いつも迷いが無く危なげないなあ、と毎回感銘を受けます。