八月納涼歌舞伎 第二部

  • ゆうれい貸屋

幽霊の派遣会社、みたいなアイディアが面白かった。勘三郎さん演じる幽霊がいいこという。死んでしまっては何もならない、なんでも生きている間だけのことだよ。といった按配の「今を生きろ」的なメッセージが暑さでふやけた心にしみいりました。

  • 新版・舌切雀 −花鳥の祭り・夏の里−

これ、ものっすごーーーーく好き!幕が上がって照明がついた瞬間に目の前に広がる、ポップな美術と衣装が彩る絢爛豪華な絵巻からしてすでにうっとり。四段のタンスの引き出しの中にそれぞれ春・夏・秋・冬の森が広がっていて、引き出しに入り込んでそこへ行くという設定や、鳥たちの愛らしくもシュールな世界といったものから匂いたつ微妙なクレイジーさがたまらなく好みだった。勘太郎&シッチーの息子夫婦にからむ超邪悪なお婆さん役の勘三郎さんの容赦ない傍若無人ぶりがめちゃくちゃ可笑しい。渡辺えり子さん書き下ろしの新作、という意外はまったく無の状態で見始めたので、小さいつづらが出てきた時点で初めて、「あ、舌切雀って、日本昔話のあのしたきりすずめのことだったのかー!」とやっと気づいた。

途中、ちょっとシュールさに磨きがかかる場面での「何言ってるかわかんね」みたいな勘三郎さんのつっこみや、お琴で奏でる「四羽の白鳥」(ってタイトルなのかな?あの、白鳥の湖の有名な曲)の絶妙なミスマッチ感も忘れらない。鳥たちのダンスの中にさりげなくビリー隊長考案の体操がまぎれていたのも、2007年夏っぽくてナイス。そんな夏のお遊び的な楽しい踊りのあとの、勘三郎さんと三津五郎さんのスタンダードな舞の場面がこれまた素晴らしくてため息。