マイレージ、マイライフ

長らくひとりで生きていると自分の決まったルールやスタイルが確立され、それはとても快適だし、経験の蓄積がうまい具合にからんで仕事をこなす充足感だってあるし、自分だけのペースでいつまでも同じように楽しく生きていかれるのではないかと思う鼻歌まじりの日々に、ある日とつぜん冷や水がかかったときの心の揺らぎが描かれていて、心の底を静かにゆさぶられるようなこころもちがした。どのエピソードも無駄がなくテンポがよく、シンプルながらも人生の苦さもまろやかさもしっかりと染みた、いい映画だった。クルーニーのゴージャスさが、ちょっとしょんぼりしがちなトーンの作品の雰囲気を特別なものにしているようで、さらに味わい深くなっているかんじ。