ブンミおじさんの森

森の中に黒い生き物、という構図がアンリ・ルソーの『蛇使いの女』を想起させ、ああ、なんだか好きな世界だなー、と思ったものの。ブンミおじさんのウィスパーボイスに癒されたものの。彼が失ったひとたちが食卓に集まってくる場面の幻想的な物悲しさと、淡々とシュールな会話もかなり好きなのだけど。いまひとつ乗りきれず。一見どうということのないシーンを意味ありげに長々と撮影し続けるタイプの映画はやっぱりわたしには合わないとつくづく実感した。せっかちなのかな。養蜂場ではちみつを舐めてみると美味しくて何度も舐めちゃう、という場面と、トン兄さんがシャワーを浴びる場面の執拗さはちょっと面白かった。味わい深い愛らしさをかもしだすブンミおじさんを演じたひとの本職は役者ではなく、屋根ふき職人というのが渋くて素敵。