八月納涼歌舞伎 三部 『法界坊』

タランティーノっぽい演出あり、宙乗りありで最終的にはオーソドックスな歌舞伎の醍醐味で〆るのが素晴らしい。ワクワクが止まらない、贅沢な舞台でした。

福助の立ち役を初めて見た。モテて困っちゃうなあ的なしれーとした風情が魅力的だった。橋之介はほんと仕事ができるかんじ。すごく好きかもしれない。あと、扇雀さんがモテモテ女子の役というだけで、何故かものすごく可笑しみを感じてしまいました。七之助の可憐な姫が亡霊役で出てきた時の芝居が良かった。勘太郎の白塗り具合はちょっとドナルドマクドナルドのようだった。彼の動きは見ていて本当に気持ちが良い。才能や努力や、そういったものが今むくむくと細胞分裂しているような勢いを感じる。あと、壊れた亀蔵が素晴らしかった。人間ってあんな動きができるのだね。

一つの演目の中で、ワルな坊さん→坊さんと姫の怨霊が合体した姿→坊さんの怨霊が入った女役→隈取した勇壮な(?)怨霊という、勘三郎さんの変貌ぶりが素晴らしかった。女役の踊りをちゃんと見たのは初めてかも。前半の弾けまくった人と同じ人とは思えない、しなやかで儚い動きに、ちょっと泣きそうになった。法界坊は憎憎しいけど愛らしいし、双面の宙乗りはゾクッとしたー!十八代目がいる時代に生まれて良かったよ。

今日は前方の花道真横の席で、すんばらしい芸を間近で見られて何度も息が止まりそうになった。一人で鑑賞したのだけど、隣に座っていた老婦人とお話したら、82歳ですって。素敵な人だったー。先代の勘三郎さんが中村もしほの名で出ていた頃から歌舞伎を見ていたそうで、もちろん現勘三郎さんの桃太郎も見たとのこと。すごいなあ。彼女の年齢まで辿り着こうと思ったら、あと50年も歌舞伎が見られるよ!すげー。楽しみ。年取るの怖くナイ!

台風接近の中劇場へ向かう感じが、「忘れられた荒野」初日っぽかった。今日の勘三郎さんは赤いスカーフを握り締めて「スチュワート!」って言ってました(ウソ!)。