嫌われ松子の一生

すごい。あの原作を、こんなにも魅力的な作品に仕上げてしまうなんて!この前TVで「下妻物語」を見た時に、小説を映画にするというのはある種の翻訳作業で、この監督はその術にものすごく長けている人なのだなあ、と思ったのだけど、本作では更にハイパーに力量発揮していた。文芸翻訳においては、翻訳者の勝手な解釈や書き換えなどは言語道断だけれども、小説から映像への変換作業は、もうどんどん感性の赴くままに自分の解釈を取り入れていくというのもアリなのだと、今更ながらに気づきました。もちろん、仕上がりがそれに見合う場合にのみ好意的に評価されるのだろうけど、松子はもー、全然アリ!

ラストがなんというか、それまでのテンポと違って妙に丁寧でセンチメンタルで、そこだけ異色な感じもしたものの、しっかり泣いてしまいました。徹底的なフィクションって気持ちが良い。

嫌われ松子の一年」で綴られていた、中谷美紀の努力と苦労に見合った素晴らしい作品が出来上がったことに、他人事ながらホッとした。監督は美紀様に暴言吐きつつも、その実とってもとっても美しく撮ってくれていたのだね。歌声も良かった。そしてとにかく瑛太がカワユイ。エイタンも「嫌われ松子の甥の一年」という本を出すといいのに。