冬の欧州ひとり旅 七日目 フランス

朝食後エッフェル塔まで散歩。陽の光の中で見るすっぴんのタワーも優雅。セーヌ川沿岸に立つと、わあ、パリに来たなあ、という気持ちがぐわっとこみ上げてきた。360度見渡す景色すべてがエレガント。バトームーシュの二階席に乗り、暖かい日差しのもとセーヌ川遊覧クルーズ。沿岸から立ち上る、観光地の王者の風格にクラクラする。折り返し地点あたりから急速に寒くなり、クルーズが終わるころには氷のように冷え切っておりました。

カフェで暖を取り、大きくて美味しいピンクのマカロンを食べながら上記の日記を更新。ノートルダム大聖堂に行くと大行列。元旦はさすがに美術館やらなにやらがけっこう閉まっているので、人が集中するのはやむを得ないね。しばし並んで聖堂内に入り、美しいバラ窓や祭壇を見ながら、新年の抱負にあれこれ思いをめぐらせたり、時に祈りをささげたりしながらぼんやりとすごした。

教会を出て適当な方角に歩いていると、メリーゴーランドやアイススケートのリンクや、そりに乗って滑る人口雪(なのかな?)が敷き詰められた傾斜したスペースなどが設置されている広場があった。子供たちがキャッキャキャッキャ言いながらはしゃいでいて、いかにも異国の冬という趣。近くの駅からメトロに乗ろうとしたら、切符の自動販売機の操作の仕方が分からない!画面を押しても、ボタンを押しても何も反応しないよ。後ろに並んでいた美人のパリジェンヌに助けを求めると、なんか、機械の手前にあるゴロゴロしたやつをゴロゴロして(これが私の説明能力の限界)操作してくれて、無事購入。メルシーお嬢さん。超あせったよ。お嬢さんといえば、20歳でパリに来たときには、「マドモワゼル」と呼びかけられるのが常だったけれど、今回はやっぱりあれだね、「マダム」って呼ばれるね。ほんのり切ない。

そしてメトロ構内で「エレクション1&2」のポスターを見つけてニヤニヤ。これ、色んな駅にあって、メル・ギブソンの新作映画の広告と同じくらいの頻度で見かけたよ。ジョニー・トー作品はフランスではメジャーなのかしらん。時間が合えばパリの映画館で見てみたかった。あんな場面やこんな場面、パリっ子たちの反応やいかに?

シャンゼリゼのあたりまで行き、凱旋門を眺めながら通りを闊歩。そこからホテルの方までゆっくりゆっくり歩いて帰った。なぜかどうしてもパン類を食べる気になれず、実家のおせちに思いを馳せながら、近場でテイクアウトしたチャイニーズを食べた。三日連続中華や。お米バンザイ!

BBCで”Flashmob Opera”という番組をやっていて、これがものっすごく面白かった。フラッシュモブって、あの、ウェブの呼びかけで集まった人たちが集団で何かやらかす、ってやつだよね。フラッシュモブ・オペラは街角オペラという感じ。ロンドンのかなり大きな駅(パディントン駅かな?)で、普通に人が行きかう中でオペラをやっちゃおう、という企画で、司会の人も「世界初のこころみです!」と煽っていた。前フリのVTRで、サッカー好きの旦那とケンカして、愛想をつかした嫁が荷物をまとめて実家に帰ろうとする、という部分までがまず放送されるのだけど、ケンカの部分ももちろんオペラ。♪あなたのサッカー好きにはー、もううんざりよー ♪サッカーはオレのすべてさー、という具合に。

そして嫁がスーツケースを持って駅に入ってくる、というところから第一幕のはじまり。オーケストラが駅構内にいて、カメラもあちこちにあるだろうから、何かしら行われている気配はするのだろうけど、一人で歌い上げている女の人の姿に、通り過ぎる人がたまにギョっとしているのが可笑しい。そして、その女性を狙って「どんな女でもオレに落ちる。おお、あの悲しげな女性はオレの慰めを必要としている!」と自身満々に近寄る伊達男。嫁、危うし!そして家出に気づいた旦那は嫁を追って駅へ。サッカーチームのユニフォームを来た夫が地下鉄の中でつり革につかまって♪オレが悪かったんだー 待っててくれー などと朗々と歌い上げる姿(地下鉄の中での伴奏はアコーディオンのみ)もかなり面白い。音楽はたぶんオリジナルのものと、カルメンなどのメジャーなオペラの楽曲の替え歌だっと思う。

なんやかんやあって、夫の応援するチーム(チーム名失念)と敵対するチェルシーのファンや警官隊や天使まで出てきて駅の中であれこれ歌って、最後は「誰も寝てはならぬ」を、さあ、駅にいる皆さんもご一緒に!と天使が呼びかけて皆で大合唱、その歌声は今まさに列車に乗らんとする嫁の耳にも届き大団円。ほんと楽しかった。新春特別番組かと思ったら「2004年10月(たしか)収録」とテロップが出たので、再再再放送とかなのかしら。もう一回見たい。NHKの芸術劇場あたりで放送すればいいのに。