出エジプト記 (出埃及記)  @東京国際映画祭

出だしのシュールな映像からすでに心をつかまれ、これ、絶対に好きな映画だ!という予感でいっぱいに。わりあい静かで淡々としつつ、非現実的なものの気配が見え隠れするところが、とてもよかったです。そして、「女って、怖ええええぇえぇ」という男性の叫びが映画全編を通して流れているようなところが、『大丈夫』と同じ空気を感じて興味深かった。
善人でも悪人でもない、静かな面持ちのサイモン・ヤムが新鮮。まったりとなりがちなシンプルな映像とつかみどころのない物語をヤムヤムの存在感でぐっと前に前に引っ張っているような印象を受け、やっぱりすごくいい役者だなあと思いました。カラオケの歌声の破壊力がすごかったなあ。あと、張家輝が出ていることに、本人登場から15分くらいずっと気づかなかった。絶妙な小物っぷり。

映画の中で、ある恐ろしい組織の存在が描かれているのだけれど、上映後のティーチインに出てきたパン・ホーチョン監督が、「客席に、組織のひとはいませんか?」みたいなことを言っていたのが可笑しかった。あの組織、やさぐれた気分のときは私も入りたくなるであろう。ふふふ。