コクーン歌舞伎「三人吉三」

以前、三人吉三の一幕目の部分だけ見て、「月も朧に白魚の〜」というあの名台詞や、三人揃い踏みのかっこよさにクラクラしたのだけど、後半があんなに壮絶な展開になるものだとは知らなかった。金は天下の回り物的な趣のよくできた話。あと、この演目が作られた当時の(あるいはこの作品独自の?)倫理観と現代のそれが微妙に違うというか、「えっ、そっちの方がNG?」という驚きがあって興味深かった。コクーン歌舞伎ならではの大胆な演出もちらほら。ただ、去年の北番のときも思ったけれど、時おり挿入される現代よりの音楽は、わたしは、あまり、んーーー。椎名林檎の歌が流れるのも、んんんんー。ギブミー三味線!アイ・オンリー・ニード太鼓!と思う場面も。しかし串田さんの演出の歌舞伎は、登場人物がよりリアルに感じられるというか、血や汗や涙が強く伝わってきて、共感できない悪党の姿にさえも心を動かされるところが好きです。そしてラストの色のコントラストの美しさよ。目の前で現実に起きているというのが信じがたいほどの美しさに、口をぽかーーーんと開けて見とれてしまった。
勘太郎さん&シッチーが可憐でけなげで、実に実に素晴らしかった。心に響く演技。笹野さんにもシビれた。先週の時効警察で、のほほんとした駐在さん姿を拝見したばかりなだけに、ギャップがたまらない。勘三郎さんがちらっと英語を話していたけれど、発音が滑らかでびっくり。あー、来月の中村座NY公演に行きたい!