リトル・チルドレン

シニカルでほんのりユーモラスでありながらどこか哀しくて、でも明るい光がちらちらと心に差すような、とっても好きな温度の映画だった。郊外で一見平穏そうに暮らす主婦や主夫の、ごくありふれたように見える人生の中にあるリアルな失望や閉塞感や希望が、ふしぎなほどに魂に響いた。
出ている人たちがハリウッド的にキラキラしていないところが、物語をより切実なものにしていた。ケイト・ウィンスレット(すごくいい!「ホリデイ」に続いてますます好きになった)のもったりした色気や、ジェニファー・コネリーの、家計を支えてバリバリ働く凜とした姿の中に見え隠れするどこか不安定な感じ、そしてその夫の、アバクロの広告に出てくるさわやか男子が少し年取ったような趣、といったあたりも、なんともリアル。そして、なんといっても、過去に幼児に対する性犯罪のかどで服役したという設定の男性の、ものすごくリアルな不気味さ。不気味なだけではなく、身内にとってはやはり大事な人間である、というところが描かれているところも切なくてすごくよかった。彼の母親の愛情が、もう、なんとも泣けるのでついつい彼にシンパシーを抱きそうになるたびにひゅっと肩透かしをくらうようなところが絶妙。
ちょっと前に、Tom Perrottaの小説は面白いよ、と友人に薦められ、彼の作品をあちこちの本屋さんで探していたのだけど、どこにも置いていなくてがっかり。アマゾンさんに相談しようと思った矢先にブックファーストでこの映画の原作本を見つけたので、映画が面白かったら読んでみてもいいわね、と大上段に構えていたのですが、その世界観をあまりにも気に入ってしまい、ル・シネマからブックファーストに駆け足で直行しました。帰りの電車の中で早速読み始めたのだけれど、作者自ら脚色にかかわっているだけあって、映画の温度がそのまま描かれている様子なのが嬉しい。ほかにも映画化された作品があるみたい(たしか、リース・ウィザースプーンとかが出ていたと聞いたような)なので、そっちも観たい&読みたい。今後注目したい作家。