marik2011-03-08

香港の旅日記を書いていたら、マラソン部分が異常な長さになったので、別途こちらに載せます。駄文長文ではございますが、自分の思ひ出記録と、今後万が一また気がむいて長距離走の大会に出ることがある場合の参考資料としてとりあえず。

<はじめてのハーフマラソン @香港マラソン on February 20, 2011>

7時起床。置きぬけにまずは持参した福砂屋のカステラをKとはんぶんこして、恵方巻さながらに無言でもぐもぐと食べた。マラソン経験者の友人たちから事前にいろいろと指南をもらい、一週間前から4日間くらい炭水化物を抜いて(とかいいつつインドカレー屋でうっかりナンを食べたり、コロッケ食べたりしていた)、その後は炭水化物をものすごくたくさん摂取するとよい、というのと、大会の朝はカステラとか食べるといいよ、という指導を忠実に実行。ほんとはさらに朝からうどんとかお餅を食べるとよいとのことだけど、海外の大会だとこういうのがちょっとやりにくいね。

YMCAに泊まるといつも置いてくれているバナナを食べて、部屋を出る30分ほど前にVAAMのゼリーを飲んで栄養補給完了。部屋で軽くストレッチして出発。この時点でまだかなりテンション低いです。外に出るとやっぱり寒い。香港到着以来ずっと、日曜に雨がふったら絶対にゆるさない!と念を送り続けていた甲斐あって、雨だけは回避のどんより曇り空。走るにはこれくらいがちょうどいいかな。

YMCAから徒歩1分で荷物を預けるトラックに到着。むかし尖沙咀に裕華があったあたりの横の道路にトラックがたくさん並んでいて、自分の荷物タグの番号に該当する番号がふられたトラックに預け入れて完了。ナーバスにストレッチしつつ、ネイザン・ロードまで向かう途中で見かけたニューバランスのでっかいスニーカーの着ぐるみと記念撮影。

見慣れた彌敦道に一台の車もなく、ただひたすらゼッケンをつけたランナーたちがわいわい集結しているのが圧巻だった。ゼッケンの引き取りの際にもらう参加グッズ一式のなかにあった香港マラソンTシャツを着ているひとが結構おおかったかも。あと、パッケージのなかには参加記念メダルも入っていて、これ写真でわかるかな?うさぎとともに尖沙咀の時計台とコンベンションセンターと青馬大橋と、はしっこにピークトラムと中銀大廈とおぼしきビルが刻まれていて、香港好きにはなかなかのお宝。
スタート場所はミラマーの前あたり。司会者の煽りもあって、皆いい感じに盛り上がり、なんとなく気分も上向きに。気づいたらもうスタート。なにしろすごい混雑なので、普段より遅めくらいのペースで、Kとおしゃべりしつつゆっくりランニング。佐敦のBPインターナショナルがあるブロックの角を曲がり、Elementsなどを眺めながら九龍サイドを北西に進むかんじだったのかな。ところどころに応援の人たちがいて、「加油加油!」と言われるのがうれしい。

前半は高速道路を延々と走りつづけ、ちょっと果てしない気持ちに。ワトソンズ提供の給水ポイントがふんだんにあるのと、簡易トイレも道すがらにたくさんあるので安心安心。反対車線を、朝早くスタートしたフルマラソンのランナーたちが折り返して戻ってきている様子が見え、その疲れきった様子に、フルマラソンには手を出すまいという思いを強くした。
折り返し地点でトイレ利用で立ち止まり、ついでに持参した走っているときの栄養チャージ的なリキッドを飲んだら、ちょう濃厚!ネクターの5倍濃いような液体が体内になだれ込み、水!水を!と給水所めざしてふたたび走行開始。

ずいぶん遅れをとったと焦りながら普段のペースよりもガンガンにスピードを上げて走るのだけど不思議と疲れない。アドレナリンすごい!歩いている参加者がめちゃくちゃ多いので、その間をぬいながら爆走。
ふと右側を見ると、香港島の景色がばばーんと目に入り、あああああ幸せ!あの景色を見ながら走れるなんて幸せすぎる!とうっとり。

西側の海底トンネルの手前で、先を走っていたKを発見し並走。やがてわたしが大会前からずっとナーバスになっていた最大要因である、毎年けっこうな数の参加者の具合が悪くなるというトンネルにin。
湿気天国香港の換気の悪いトンネル、しかも上はビクトリア湾、というコースを12、3キロ以上走ってきた状態で2キロ強走るなんて、閉所恐怖症&マラソン初心者にはかなりの難関なので、ipodで音楽聴きながら目線はなるべく下に落とし、現実逃避。

コースの途中でときどきワセリンかタイガーバームか、なにかそんなかんじのネトネトしたものを提供してくれる人たちがいて、参加者はそれをもらって脚とかにぬっていた(わたしはCW-X履いているので塗らなかった)んだけど、トンネル内にはタイバーバームの匂いが充満していた。
しかも、ちらっと目線を上げたら隣の車線を普通にバスが走っていて驚愕!現実逃避、現実逃避。

トンネルをどうにか切り抜け、マカオ行きフェリーターミナル近くの地上に出ると、今度は急な斜面にちょっと苦労。そして相変わらず歩いているひとたちが壁となって前にそびえているので、急な斜面を大きく蛇行しながら抜かしていくのがちと大変。

中環のあたりは一車線だけ(さすがに二車線はあったのかな?記憶があやふや)マラソンコースになっていて、周りは普通に車がガンガン走っているのがいかにも香港らしい。日ごろ皇居周りを排気ガスぎゅんぎゅんに吸いながらランニングしてると、こういう時に耐性がついていてよいと思った。
中環のだいすきな景色のなかを走りながら、ここをマラソンランナーとして駆け抜ける日が来るなんて、初めて香港を訪れた11年前には(そしてほんの1年半ほど前までは)想像もしていなかった!と感慨深いきもち。

湾仔のほうに抜け、コースもいよいよ終盤。水と一緒に準備されているワトソンズのスポーツドリンクがずっと気になっていたのでためしに飲んでみたら、なかなかアグレッシブな味というか結構主張が激しいかんじの味わい。
残り2、3キロかと思うと一抹の寂しさすら覚え、このままいつまでも走っていたい気持ちがこみ上げてきた。ちょっとおかしい。これがランナーズハイというものなのかな。「喜記」の前を通り、あ、ここで蟹を食べるという手もあったか!と晩御飯プランをおもむろに練ることができるのも香港ならではの楽しみですね。

銅羅湾のそごうの裏手にさしかかると、沿道にはマラソンの応援ではなく、道路を渡るのを待っているっぽい人たちがひしめきあっていて、ところどころピンポイントに「加油加油!」と応援してくれる人たちがいるものの、あとは静かにざわめくかんじのシーンとした空気のなかをひた走った。いやしかし気持ちがいい。心配していた膝のいたみもなく、10キロと15キロ地点あたりでBCCAの粉を摂取したおかげか脚の疲れもほとんど無い。

ビュンビュン走ってついにビクトリア公園に着いちゃってゴール。ゴールのゲートをくぐったところでKが待っていて、速攻写真を撮ってくれた。さっそくFacebookにアップしたんだけど、興奮のためか蒸気かなにかで異様にくもったなかで満面の笑みを浮かべるぼさぼさ頭の私が映っていて可笑しかった。やりきったよ!トイレ休憩で一度立ち止まったものの、給水所で水を飲むときだけ歩いてもいいという自分のルールを順守することができ、きっちり走り続けられた達成感が半端ない。

とはいえしみじみ浸る間もなくなく人波に流され、水や栄養バーが入った袋をもらったり、バナナをもらってもぐもぐ食べながら歩いて、靴につけたチップを返して歩道橋をこえて図書館のほうまでわたって荷物ひきとり。走り終わると寒さがあらためて身にしみる!
芝生の上でストレッチしたあと、ふと鏡を見たら頭がすごいことになっていたので、膝をついて髪をとかしていたら、Kが「小雪ラストサムライ小雪みたい!」とウケていた。ああ、あの水浴びシーンね。細かすぎてつたわらない物まねのレパートリーにいれておこう。

1年半前までは、学生時代の一番嫌いな思い出はいつだってマラソン大会!マラソンとかマジ信じられない!というほどランニングが大嫌いだった人間が、21キロを楽しく走ることができるようになるなんて奇跡。本番でのアドレナリンとBCCAのパワーはすごいね。いちおう、今年の激烈な寒さのなかで粛々とトレーニングを続けた自分のがんばりも評価してあげたい。努力は自分を裏切らない、ということが人生でたまーには起きるものだと久々に実感できるすばらしい機会だった。

あと、今回つくづく参ったのは「初めてのことをやる前のとにかく不安でしょうがない」心理状態。馬齢を重ね経験値が増えたつもりでいても、見たことのない景色というのは無尽蔵にあって、そこに出くわさんとしたときにどうしても不安で必要以上にナーバスになってしまう癖というのは抜けないものだなあと、あらためて思い知らされました。でも結局のところ、大丈夫なのだと。過信は禁物だけど、大丈夫、たいていの景色はすばらしいのだから、怯えずにバンバン行きなさい、とあらためて自分に言い聞かせたい。