北米・南米シリーズ2012 Day 21: ニューヨーク

ブエノスアイレス出発から10時間(長いー)を経て、早朝JFKに到着。デルタとアメリカンは乗るたびにもう二度と乗るのはやめようと思うのに、また数年たつとうっかり乗ってしまうよなあ、とまた反省しながら降機。
空港にて近くのエレベーターがすぐに来たので、別のエレベーター前で待っていた西洋人に「こっち来ましたよー」と声をかけて待ち、ありがとう!と乗り込んできた際、きみどこから来たの?日本です、というやりとりをしたらいきなりものすごく流暢な日本語で話し始めた。奥様が日本人で、一年のうち半分は日本、もう半分はロス、というスタイルで暮らしているとのこと。そういう生活が本気でうらやましい!
ターミナル1に預けていたリモワを引き取りに。南米のホテル二泊分くらいの料金。
タクシーの運転手さんとずっとおしゃべりしながら、ふつうに英語だけでコミュニケーションがとれる喜びをしみじみかみしめる。もう、スペイン語ポルトガル語も必要ないのね!
ウォールストリートの近くからマンハッタンに入り、早朝のニューヨークの景色にうきうき。8th Avenueにあるホテルに着いたのが10時頃で、とりあえず暖かい服を着てUGGのブーツに履き替えて荷物をあずかってもらい、街にくり出す。
まずはブロードウェイなどぷらぷら歩き、ニューヨークに帰ってきた感を満喫。それからMOMAに行って好きな絵たちにご挨拶。まずはワイエスの”Christina’s World”から!
そして、ここにあるアンリ・ルソーの”Sleeping Gipsy”は世界で一番好きな絵なので、絵の前に座ってひたすらガン見する。ルソーの、想像力全開でつたないながらも一生懸命描いたかんじの画風が本当に好き。ジプシー女が砂漠でひとり、疲れてはてて眠りにつき、ライオンがやってきて眠る女をふんふんと鼻先でかぎまわるものの、彼女に危害を加えることなく去っていき、やがて朝になって女は自分の身が危険にさらされていたことなどつゆ知らず目覚め、またひとりで旅を続ける。という物語を勝手に妄想し、勝手にぐっときて涙ぐみそうになる。
改装前のMOMAでは『睡蓮』が置いてある部屋のお向かいにアパートメントがあって、その建物に住めば自分の部屋から『睡蓮』が見られるのではと思い、いつかそこに住むことを夢見ていたのだけど、今回改装後に初めて行ってみたら、『睡蓮』は奥まった部屋に置かれてしまっていた。残念。でも今年はパリとNYと立て続けにデカい『睡蓮』に再会できて実に幸せ。
ダリの『記憶の固執』はどこかしら?と散々さがしまわるも見つからず、係員に聞いたら、今フランスに行ってるとのこと。
エキシビジョンでユニクロ協賛による1950-60年代の日本のアーティストの作品展が開催されていて、これがとても面白かった。横尾忠則黒川紀章岡本太郎あたりのメジャーどころから、わたしが知らない数々の戦後の前衛アート作品まで、バラエティに富んだ作品が並んでいて楽しかった。MOMAで高倉健の写真(むかしのやくざ映画のポスター)が見られるとは!
MOMAを出て五番街に向かい、サックス・フィフス・アベニューやセントパトリック教会などで、はじめて見るクリスマスのニューヨークの景色を満喫。ロックフェラー・センター前のクリスマスツリーは、ホームアローンで見て以来の憧れだったのでうれしい。
バーンズ&ノーブルで”The Best American Short Stories2012”を見かける。毎年ひとりの作家が選出したさまざまな短編が掲載された本で、今年はTom Perottaだったので迷わず購入。

小腹がすいてきて牡蠣でも食べようと思いつき、グランド・セントラル・ステーションに向かう。道中、クライスラービルが見えてテンションあがる。NYで一番すきなビル!
グランド・セントラル駅もかなり久しぶり。ここに来ると必ずテリー・ギリアムの『フィッシャー・キング』の名場面を思い出す。あの夢のようなダンスのシーンを。


グランド・セントラルのオイスター・バーは初めて。広い。カウンター席でクラムチャウダーと、牡蠣を4つ5つ種類はお任せでオーダー。白ワイン&生牡蠣の幸せ。
ワインでふんわりした気分で再び街中へ出て、そうだロングのダウンを買おう!と思いつく。ボストンのアバクロで見たダウンでいいかな、と思ってアバクロに行ってみると、すんごい行列!並びたくない!あの匂いをかぎつつ店先をスルー。
Bergdorf Goodmanのショーウインドウがシュールで超すてき。ついでにふらりと中に入り、ぼーっとエスカレーターを乗り継ぎ、ぼーっと歩いているとモンクレーのコーナーにたどり着き、ちょうどいいサイズの、ちょうどこういうの欲しかった風の色とデザインを見つけてしまった。店員さんの「このサイズでこのスタイルはラスト1点よ」の常套句にもあおられ、ついつい「これいただくわ」が口からこぼれ落ちる。日本より安いのがうれしい。そのとき私が来ていたショート丈の昔のデカいロゴのモンクレーを見て店員さんが「それ懐かしいわね」と言い、「でしょ!もはやヴィンテージっぽいでしょ」と応えながらお店をあとに。これでNYで凍えなくてすむ!
すっかり暗くなり、もう7時くらい?と思ったらまだ4時すぎ。前日まで暖かい場所にいたのが信じられない。
ホテルに戻り、鍵をもらってようやく部屋に。エレベーターに乗り合わせたおばさまたちが私の紙袋を見て、「あら、バードルフグッドマンでお買いものしてきたのね!あそこのショーウインドウ見た?」と言ってきて、そうそう、面白いですよねー、とひとしきり盛り上がる。

今回NYで泊まったのはHampton Inn Times Square Northで、今までにマンハッタンで泊まったなかで初めて満足できたホテル。ゴージャスさは無いけれど、立地がよく、部屋もゆったりしていて設備も過不足なく、ロビーで24時間コーヒーやお茶やココアが飲めるので、出かけるときに必ず暖かい飲み物を片手に街に出られるのがたいそうありがたかった。
しばらく部屋でごろんごろんしたあとタイムズスクエアをうろうろし、”Spiderman: Turn off the Dark”の劇場に。ボストンにいたときにオンラインで予約していて、ボリビアのホテルでプリントアウトしていた紙をもってさらっと入場。2階席の一番前。はてさてどれくらいスパイダーマンは近くに飛んできてくれるのかしらとウキウキ。隣には4歳くらいの男の子がおじいちゃんと二人で見に来ていて、スパイダーマンのコスプレもばっちり。目が合ったら糸を放つポーズをされたので"cool"と言ったらすごいドヤ顔で可愛かった。

ミュージカルは、基本、サム・ライミ版の映画1と同じで、アンクル・ベンはやっぱり死んじゃうしグリーン・ゴブリンが出てくるんだけど、なぜか唐突にギリシャ神話のArachne(ギリシャ神話に出てくる、蜘蛛に姿を変えられた女性)が出てきて例の「偉大なるパワーには偉大なる責任が伴う」とか言いだすのがすごいナゾ。U2のボノとエッジが担当した音楽はキャッチ―でいい。グリーン・ゴブリンの♪おれがマンハッタンを乗っ取るぜ〜、みたいな歌が一番頭に残っているかな。あれ、ボノに歌ってほしい。
ミュージカルの作風が迷走してるというか、急にポップになったり、また蜘蛛女が出てきたり、急にロマンチックになったり、悪役がぞろぞろ出てくるところは完全に遊園地の子供向けヒーローショーだったりで、世界観のぐらつきが消化しづらい。
ただ、スパイダーマンが飛ぶところだけは本当に素晴らしいです。グリーンゴブリンとの空中戦もあり。まだステージ上で別のスパイダーマンが飛んでいるときに、席の近くに別のスパイダーマンがスタンバイして背中にかちゃりとワイヤーをつけているのを見たり、わたしの隣の席のコスプレ坊やにスパイダーマン超反応してきたりするのが楽しかった。全部で9人だったか、それくらいの数のスパイダーマン役のスタントマンがいて、カーテンコールで全員マスクを取ってあいさつするのも興味深い。
ミュージカルの紹介映像だとこういうかんじ↓

カーテンコールのあとは、さっきまで悪さ三昧をしていたグリーンゴブリン役のひとが真面目にブロードウェイ俳優組合か何かで募金をつのるスピーチをしていて、これまでの募金実績で日本の震災にもふれていてちょっと泣けた。感謝の意をこめて募金して帰ってきました。
23時すぎでも全然にぎわっているタイムズスクエア。寒いけど楽しい。デリでチキンヌードルスープを夜食に買い求め、ホテルに戻る。